絞殺 (ページ24)

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話しかけられたあの日からカフェに通う日を重ねる毎、【タカハシ】さんという店員さんとの距離が近くなっていった。

距離が近くなっていったと言えば少し恋愛の意味を含ませてしまうかもしれないが、そうではなく、遠くから見ていた彼によく話しかけられるようになり、物理的に距離が近くなったということ。

そして今日もまた、目の前には【タカハシ】さんがいて、私のためにこのカフェの裏メニュー的な存在らしいアップルティーを淹れてくれている、

いつもはカフェラテばかり頼む私が急にアップルティーを頼んだのは目の前にいるこの男のせいだった。

「このカフェには裏メニューがあるんだ。何個かあるんだけど、俺のおすすめはアップルティー。凄く美味しいからまた気が向いたら頼んでみてね。」

裏メニューを自ら客に教えるなんてこの男のことは理解できない。
だけどそんなにおすすめされるなんてどれほどの美味しさなのだろうと思い、今日は勇気を出して頼んでみた。

「はい、アップルティー。」

『あ、ありがとうございます。』

「そういえばまだお互いの名前知らなくない？」

『ああ、そう言えば。』

私が知っているのは【タカハシ】とネームプレートに書かれた名前だけで、彼は私のことを君とかねえって呼んでいた。

「俺、髙橋優斗。一応大学生。君は？」

『西園寺Aです。』

「西園寺なんて凄い珍しい名前だね。」

『はい、まあ。』

「Aちゃん、俺のことは優斗って呼んでね。」

年下とわかっているからか、彼はいきなり私をちゃん付けで呼んできた。

『優斗さん。』

私がそう呼ぶとまるで尻尾を振って飼い主に擦寄る犬みたいに嬉しそうだった。

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