君の蒼い花。2章=オリジナル=

69話 ページ19

「失礼しゃーす！」
お風呂の戸が勢いよく開いた音に
俺の肩がびくんとなる。

「おい、前くらい隠せよ」
狭い風呂場に全裸の雨生がどかどか入ってくる。
ちゃちゃっとかけ湯をしただけで
湯船に飛び込んできた。

「ざぶーん」

「ざぶーんじゃねぇよ、なんだよ」

「だって晴生泣いてたんだもん」

「泣いてねぇよ」

「うそつきだー！」

バシャバシャと顔をお湯をかけられる。
いつまでも子供だな、雨生は。

「もう、やめろよ〜」
俺もやり返す。
倍返しで。

「あ、やっと笑った」

びっくりして雨生を見ると、
得意げな顔をしている。

「晴生は笑顔しか似合わないからさ。
ブスだし」

「ブスは余計だ」
軽く小突いてもずっとドヤ顔のまま。

「俺らは兄弟の中でも特別だろ？
10ヶ月お腹の中で一緒に育ってきたんだから。
晴生のこと、いつもほっとけない｣

雨生はそう言うと俺の頬に手を伸ばした。

痣にそっと手を当てられ
少しだけ痛んだ。

「慶太のこと、突き放したりでもしたんでしょ。
晴生は優しいから」

何も言えずに黙り込んでしまう。
優しくはない。
今日もいっぱい酷いこと言った。
きっとめちゃくちゃ傷ついたはずだ。

毎月、月命日に必ずお花を持ってきて、
その度に俺に「より戻そう｣って言う。

でも、俺のところで慶太を留まらせて置くわけには
いけないんだ。

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