70話 ページ20
「俺はきっと
もうこどもは産めない」
「それでもいいと思うよ、俺は」
だめなの?と雨生は首を傾げる。
人並みの幸せは手に入れて欲しい。
何年も俺に費やすのは勿体無い。
それくらい、いい人だから。
「俺が晴生だったら〜、
めちゃめちゃ我が儘言うと思うよ〜。
『一緒にいたい〜!』って」
そんなことできない。
他人の人生奪うようなこと。
俺はぶんぶんと頭を横に振った。
「じゃあ、言い方変えるね。
晴生は〜、まだ慶太のこと好き?」
好き?
そう聞かれれば好きだ。
大切な幼馴染で、親友で、恋人だった。
好きだから、一緒にいたくない。
「好きだから、幸せになって欲しい」
「晴生は一緒に幸せになるっていう
考えはないんだね〜。
寂しいやつ」
雨生はいつもにこにこしている。
だから連られて笑ってしまう。
「そう言う雨生も早く恋人作れよ」
頬を抓りながら、嫌味っぽく言った。
雨生は一瞬だけ寂しそうな顔をしたけれど、
またいつもの笑顔に戻った。
「…いるよ」
脱衣場で雨生の呟いた言葉を
かき消すかのようにガタンと音が聞こえる。
誰かが物でも落としたのかな。
「…えっ?」
「あはは、冗談冗談!
いたらとっくに紹介してるよ!」
雨生にバンバン肩を叩かれ
結構痛くて半ギレで風呂を出た。
冗談か。
だけど、あの一瞬見せた寂しそうな笑顔が
妙に胸のどこかに引っかかっていた。
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朱々璃(プロフ) - こんぺいとうさん» 閲覧ありがとうございます!コメント頂けるとやる気起きます笑 少しずつですが頑張ります(^^) これから、兄弟一人一人の恋事情も挟みますのでお楽しみください!これからもよろしくお願いします (2017年11月13日 12時) (レス) id: e291ea7c47 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください!楽しみにしています! (2017年11月11日 23時) (レス) id: 44526260a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱々璃 | 作成日時:2017年11月2日 1時