part 9 「勘違い」 ページ10
短い静止の声。その次の瞬間に腕を掴まれて、黒尾さんの方へと引き寄せられた。同時に曲がり角から勢いよく出る自転車に驚けば、勢いのまま足がもつれてぐらりと倒れそうになる。でも転倒はせずに固く、でも温かい壁にぶつかって。上を少し見上げると、彼の顎下から首筋までのラインが間近に見える。そこでわたしは、ようやく黒尾さんの胸元で抱き留められていることに気がついた。「いやー危なかったね。」真上からそんな言葉が降ってくる。
「大丈夫？怪我してないですか？」
『･･････はい。大丈夫です。』
至近距離から聞くその声は普段と違って耳に響いて。特に男性と触れ合うことなんてなかったわたしにはこの状況だけでいっぱいいっぱいだった。そんなことはつゆ知らず、黒尾さんはもう一度口を開く。
「ならよかった。･･･あ、傘使っていいですよ。」
『えっ、いやでも』
黒尾さんが濡れちゃいます。
そう言う前に、彼は少しかがんで、「しー。遠慮しないの。」と人差し指を立てては、わたしの唇の前に添えた。いたずらっ子のようににやりと笑う黒尾さん。既にわたしの頭はキャパオーバーだ。
「女の子が風邪なんて引いたら大変ですからね。」
『･･･黒尾さんが風邪引いちゃいます。』
「俺は鍛えてるから平気ですよ。」
ふふんと自慢げに言えば、彼は鼻が触れ合いそうになるぐらいの距離まで近づいてくる。その距離の近さに思わず目を背けると、大きな手に腕を掴まれた。黒尾さんの顔がそのまま耳元にまで近づいて、「まあ風邪引いた時はAさんに看病してもらいますね。」呟いたその声色はいつもよりちょびっとだけ甘さを含んでいて。全身の血液が沸騰しているような錯覚に陥ってしまうぐらい、身体中が熱くなる。
『じょ、冗談やめてください！』
「残念ながら大真面目ですぅー。風邪引いちゃったらしばらく会えないじゃないですか。そんなの耐えれませんって。」
『なっ･･･！勘違いするようなこと言わないでください！』
「･･･勘違いしてくれないんですか？」
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ゆん - そーめんさんの表現力天才〜！続き待ってます！お体に気をつけてくださいね…！ (3月2日 18時) (
レス) id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - はい、好き〜〜。続き待ってます。 (3月1日 22時) (レス) @page6 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そーめん | 作成日時：2024年3月1日 17時
