part 4 「怒り」 ページ5
電車が着いた途端、人々は一斉に動きだす。
その中で潰されないように踏ん張ってみるも、流れと圧力には逆らえなくて。あれよあれよという間に押し込まれてしまった。常連さんとははぐれてしまったらしい。
あの人は背が高いうえに特殊な髪型をしていたのですぐに見つかるだろうけど、わたしの身長では知らない人の背中しか見えない。まぁいいかと思いスマホをいじっていれば、ふと隣にいる女性の顔色が良くないことに気がついた。
『あのう、だいじょ･･･』
カタカタと震える彼女を見て、わたしはそっとその足元を見る。すると大きな手がその女性の太腿をゆっくり撫でていて。気づけば彼女をこちらに引き寄せていた。
「･･･クソ」
曇った低い声の悪態が一瞬だけ聞こえては、電車の音にかき消されていって。「もう大丈夫ですよ」と告げれば、
「ありがとうございます･･･なんとお礼を言えばいいか」
女性は顔を赤らめながら涙を流していた。良かったと安堵していると、背後から誰かから急に腕を引かれてしまう。突然の出来事に慌てて振り向くとそこには常連さんがいた。
「･･･着きましたよ。行きましょう。」
その表情はどこか怒っていて。わたしは先程の女性と会話できずに、腕を引かれるがままに足を動かした。人混みの間を掻き分けて、自分よりもずっと大きな背中を追う。
そのまま改札まで出て、道が開けてきたところでその背中は突然止まった。だから思わず勢いよくぶつかってしまって。でもやっぱりその背中はびくともしなかった。
「･･･いいことだとは思うけど。」
『え？』
頭を掻いてこちらを振り向いた彼の顔はやっぱり怒っていて。「私何かしました？」と尋ねれば、常連さんはぐっと眉間に皺を寄せては顔を近づけてきた。その近さに思わず一歩後退りすると、彼は長い足を生かしてすぐにその距離を詰めてくる。
「何もされてない？」
『まぁ、特には何も･･･』
「本当に？」
『本当ですよ。』
なんでそこまで疑うんですか。
そんな心の声が表情に出ていたのか、「なんでお前がそんな顔するんだよ」と怒られてしまう。
「あーいう時は他の人も頼れ。お前も巻き添えくらったらどうすんだよ。」
『･･･貧相な身体を狙う痴漢なんていませんから。無駄な心配ですよ。』
そう呟いた瞬間、彼が纏う雰囲気が少し変わった。
「･･･お前、何もわかってないね。」
どろりと甘い声が上から降ってきて。わたしは思わずその場から逃げだした。
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ゆん - そーめんさんの表現力天才〜！続き待ってます！お体に気をつけてくださいね…！ (3月2日 18時) (
レス) id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - はい、好き〜〜。続き待ってます。 (3月1日 22時) (レス) @page6 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そーめん | 作成日時：2024年3月1日 17時
