2話 ページ4
プルルルル
ワンコール、ツーコール、スリーコール
いつもはここら辺でようやく...
『luz？どうしたの？』
「なあ！どういうことなん！？」
『ははっ、俺の曲聴いてくれた？』
おどけたような声。
１ヶ月ぶりに聞いたその声は、相変わらず低く響いて心地がいい。
けれど、今はそんな事を考える場合ではない。
「聴いた！最高やった！！！
でも復帰するなんて聞いてへん！！」
『誰にも言ってないよ。そらるにもまふにも誰にも。サプラ〜イズ。』
棒読みにも程がある。
人を驚かせるのが大好きなのは昔からちっとも変わっとらん。
被害に遭うこっちの身にもなってほしいんやけど。
「はぁ...ふざけとる？」
『本気で作ったよ？』
「それは曲を聞けばわかる！！そういうことやなくて...」
もっと他に言うことがあるだろ、とため息をつくと少し低いトーンで、
『復帰しちゃダメだった？』
だなんて言うものだから慌てて声を上げる。
「いいに決まっとる！！」
『ふふふ、luzは何に怒ってるの？
あーそらるとまふからもLINEだ。
「どういうことですか！」だって。』
「そりゃそうや...」
『うーん説明してあげたいけどごめんね、今からアルバムイベントの打ち合わせなんだ。
しばらく連絡出来ないからよろしく。』
「...え？アルバム？」
『あれ？ツイッター見てない？
A完全書き下ろしニューアルバム〈幻霊都市〉
明日発売です。』
「....はぁ、なんなんこの人ほんとありえへん...」
上手く噛み合わない会話に頭痛をおぼえ、こめかみを抑える。
『良かったら歌ってよ俺の曲。』
「言われなくても今スタジオに向かっとるし。」
『は？早すぎるだろ。』
「それだけ嬉しいの！！」
クスクスと嬉しそうに笑う声が電話越しに聞こえる。
「もー....A？」
『なぁーに？』
「おかえり。」
『あー...
それ今俺が一番欲しい言葉。
ありがとう、ただいまluz。』
じゃあね、と言われあっさりと切れてしまった電話を見つめ、ぎゅっと握りしめる。
"ただいま"
やって
たったそれだけの言葉がこんなにも自分を幸せにしてくれるなんて思いもしなかった。
帰って来てくれた。俺たちの神様。
あんなこと言ったけど、本当は飛び上がるほどに嬉しかった。
あぁ、
早く！早く歌いたい！！
イヤホンを耳に付け、ニコ動にあるAのページを開く。
スタジオへ向かうタクシーの中、
俺はAの美しい曲にただただ酔いしれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきうさぎ - コメント失礼します。作者様の負担になるようでしたら話は別ですが、僕は皆でハッピーエンドが良いと思います。 (2020年9月20日 1時) (
レス) id: f935ff1209 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 個人的にはhappyendが好きなのでhappyendが読みたいです…！ (2020年6月15日 18時) (レス) id: 57a51dc74d (このIDを非表示/違反報告)
匿名主(´・∀・｀) - 初めまして、失礼します。個人的にはhappy endが良いんですが…一回何らかの endで完結させてしまって、その後に場面分岐的な終わり方にすれば良いのではないか。と考えております。作者様に負担が掛かってしまいますし、上からで申し訳ないんですが…考えて頂ければと (2020年6月13日 21時) (レス) id: 610e5b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
ペン - 初めまして、今日は。 秘かに読まさせて頂いてます。今更なのですが、 happyendが良いと思ってます。体調に 気を付けて更新頑張って下さい。 (2018年6月24日 11時) (携帯から) (レス) id: c5e8935b6a (このIDを非表示/違反報告)
にょむさん - 個人的にはHappy Endがいいです！ (2018年6月17日 22時) (レス) id: c18b2f6fe2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紺碧 | 作成日時：2017年12月3日 21時
