28話 ページ29
カーテンをの隙間を抜けた朝の光が部屋に差し込んだ。
潤沢に降り注いだその光は、俺とかっちゃんを包み込み明るく照らす。
ボロボロとこぼれ落ちる涙は、喉から絞り出された嗚咽と共に、俺を抱きしめるかっちゃんの腕の中に吸い込まれていった。
俺は泣いた。
今まで泣けなかったぶん
生まれたての赤子のように
父親に殴られ痛みに喘ぐ幼子のように
誰にも愛されないと孤独に溺れる子供のように
優しい腕に縋ってただただ泣いていた。
本当は愛されたかった。
いらない存在なのだと自分を否定して暗闇にうずくまっていると呼吸の仕方すら分からなくなる。
生きている理由を指折り数えてみると、死んだ方がいい理由の方が多いのではないかと思えてくる。
そんな絶望の具現のような人生を、
そうじゃないんだと誰かに否定して欲しかった。
ここに座ってもいいんだよ
そう言ってそっと、俺の座る椅子を用意して欲しかった。
無条件に、生きることを誰かに許して欲しかった。
『おれっ、おれ...ずっと、愛されたかった。一人は、怖いよ。』
「ん、辛かったな。
ここに居ていい、ここに居てほしいんだ』
泣きすぎてしゃくりあげ酸素の足りなくなった俺をなだめるように、かっちゃんはそっと俺の背中を撫でた。
暖かなその手は、濃く深い闇に沈む俺を優しくすくい上げた。
俺を認めてくれる優しい手。
それは、生きているだけで疎まれてきた俺がずっと求めていたもの。
誰からも与えられなかった愛を、ようやく手渡してもらえた。
嬉しい。嬉しいずだ。
,
それでも
かっちゃんの太陽のように暖かい腕の中でそっと目を閉じた俺の瞼に浮かんだのは
,
色素の抜けたような髪の
真っ赤な瞳を柔らかく細めて笑う
"彼"の姿だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1326人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ウタ - 次の展開がどうなるのか楽しみです (2018年7月18日 22時) (
レス) id: 5d727cd1f1 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - めっちゃいい話だと思います！！更新楽しみにしてます！！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: 83591e10d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ストーリー展開がとても好みだし、文章が、言葉ひとつひとつが綺麗で好きです。本当に素敵な作品ですね！ (2018年6月24日 21時) (レス) id: bc7a356a9c (このIDを非表示/違反報告)
こパンダ - とてもたのしみにしてます。頑張ってください！ (2018年6月22日 17時) (レス) id: 7360b2bbb8 (このIDを非表示/違反報告)
甘露蜂蜜(プロフ) - あああこれは夢主くん弔くんのこと思い出してほしいやつです…！こういうめっちゃシリアス系好きなので展開がすごく楽しみです。頑張ってください。 (2018年6月17日 23時) (レス) id: 817d133cd9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紺碧 | 作成日時：2017年11月13日 21時
