J.S.B.旅館

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ホテル【ヤドカリ】

砂のお城のような外観のてっぺんに
ヤドカリがコンニチワした
なんとも…なセンスの
海沿いにある寂れたラブいホテル



そこの一室に
一戦を交え終えたばかりの恋人達がいます。







「来週からパリなの。」




乱れた髪を手櫛で整えながら
鏡越しに話しかける、彼女








「そっか。また暫く会えないのかな、、」






ベッドに背もたれているのは
パンツ一丁の剛典くん


やだ、ハレンチ♡
仕事をサボってこんなところで…うふん♡







「お土産買ってくるね♡」


「………。」






なんだか冴えないお顔の、剛典くん







「……ねぇ。この間の返事…
聞かせてくれない？」





笑顔の消えた剛典くん
いつになく真面目な表情で
彼女に答えを迫ります。





「………。」








彼女はがんこちゃん

大手航空会社で働く現役CAさん。
あっちやらこっちやら飛び回っていて
日本にいないこともしばしば。



二人が出会ったのは一年ほど前。
がんこちゃんが乗る飛行機に
剛典くんがお客として乗ったことが
きっかけでした。





出会った瞬間お互いに
"花咲か爺さん"状態



しかし、業務の途中。
プライベートを優先させるわけにはいかず、
がんこちゃんは終始 客室乗務員として振る舞います。






何日か後、
どタイプだったな、と空港内を歩きながら
剛典くんのことを思い出していた がんこちゃんの元に颯爽と現れたのが、剛典くんでした。




童もなんだかラブい匂いを嗅ぎ付けて
当時は剛典くんの後をつけて
空港までついていったもんです。







『これ、なんとなく君に似てて…』






空港の中で
トレンディドラマの始まりかしら！！

童も胸をパクパクさせて見守る中






差し出したのは
全然可愛くもなんともない
ピンクの怪獣のキーホルダー。


大口を開けて笑うピンクの怪獣に
がんこちゃんも苦笑い



言っときますが、全然似てません。
がんこちゃんはガハハなんて
笑ったりしません。






「可愛いでしょ？」





ふにゃふにゃ笑顔で笑う彼を見て、
がんこちゃんは
彼にセンスがないことを悟りました。







そう。
彼の唯一の欠点は ダサいこと。

普段の彼は和服でどイケですが、
クローゼットは全焼レベル。




本日のお召し物のおパンツも
熊がビチビチしたシャケを咥えてるイラストがついたおパンツ。



何故それをチョイスしたのか、
何処でそれを調達したのかは、謎。

がんこちゃんは 一日も早く
剛典くんのクローゼットが燃えればいい！
そう思っています。

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