【４４９】 ページ16
・
・
心がきりきりと悲鳴を上げる。
冷たい、智さんの知らない一面を垣間見たような気がした。
こういう道を歩んできたと分かってたはずだけど。その世界から足を洗ったはずの智さんにここまで言わせてしまうのも
……私や駿斗先輩を、その世界から守ろうとしているからなのだと理解できていても
こんな智さんは見たくないと感じていた。
・
・
すると……突然に
智さんは全身から放たれていた殺気を和らげてみせた。
まるで、私の怯えすら見抜いたかのように。
・
・
智「あのね、そういう姿勢は大事だと思うよ？むしろそうじゃなくっちゃ、善良な市民を守る警察としてはね。
だけど今回は違う。今回の事件を起こしたのは善良な市民ではなくて
……巻き込まれたこの子たちも、俺も、かなりグレーゾーンなんだよ。
もやもやするのは、分かる。正しくないことを言ってる自覚もある」
・
・
智さんは……呆然とする警察の方々に、深々と
・
・
A「智さん……！？」
・
・
頭を、下げてみせた。
・
・
智「もう一度頼みます。ここは俺の顔を立てて、お引き取り下さい」
・
・
誰よりも誇り高かった白き龍が
こんなふうに頭を下げること。屈辱的ともいえるような状況で
相手を威圧させて言うことをきかせるのではく、率直に頼んでみせた。
ちょうど、私の立ってる場所からは智さんの下げている表情が横から少しだけ、覗けて
………彼が、わずかに。下唇を噛むのが、見えて。
・
・
「………言っておくが、我々は引き下がるわけではない。
今日は、この辺にしておくと言うだけだ。怪我人の体に障るとよくないからな」
智「ご理解、感謝します」
・
・
警察の方々が、病室を出ていっても。しばらくの間、智さんは頭を下げたままだった。
自分の中で、気持ちの整理をなんとかつけているような、その姿に
申し訳なさを感じて。申し訳ないと思うことすら、申し訳なくて
・
・
A「ごめんなさい…」
・
・
口をついて出たのは、陳腐な言葉だった。
申し訳なさを伝えてしまう、酷い言葉だった。
・
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉梓(プロフ) - keimomさん» 初めまして。こんなに長いお話を挫けることなくここまで読んでくださってまずはありがとうございます。このまま最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますね。よろしくお願いします。 (2016年7月12日 22時) (
レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - ino子さん» お久しぶりです。幸せは幻覚なのかもしれない、でもそれほどに脆いものだからこそ、掴みたくもなるし大切にしたくもなるのかもしれませんね。そして、掴もうとした者・大切にしようとした者にしか決して手に出来ないものなのかもしれません。 (2016年7月12日 22時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - ものものさん» コメントありがとうございます。次章を既に読み始めていらっしゃったら、その驚きも納得とまではいかなくとも安堵ぐらいには変わっているでしょうか。最後までどうぞよろしくお願いしますね。 (2016年7月12日 22時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - ゆり:)さん» コメントありがとうございます。烈に限らず、そしてこの作品の中に限らず、人間誰しも、今のその人物は形成されるまでは必ず過去・過程がある。全部を理解するのは困難でも、一面だけを見るのではなくて、色んな見方ができるようになると世界は大きく変わるでしょうね。 (2016年7月12日 21時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - 梨沙さん» 次章でお会いしましたね( ´ ▽ ` )ﾉ笑 素敵な夏になるよう、全力で打ち上げますたま。 (2016年7月12日 21時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
