𓂅 ページ25
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「こら奈子、部屋に行ってはいけないって……」
やがて、とんとん、と軽い音を立てながら
お父さんも上がってきた。
そして、泣きじゃくり続ける娘と、
それを抱きしめる兄の姿を困惑しながら視界に収め。
「……裕樹、これは？」
「奈子が、彩を見たって」
「……え？」
「そんで、彩が、
家族のこと、あいしてたし、あいしてるって」
喉の奥から絞り出したような
かすれた声だった。
必死で感情を押し殺しているような、
不透明で、けれど心がこもりすぎた声。
自分の息子のそんな声に言葉を詰まらせたお父さんは
瞳を揺らして、僕らの向こう側を見た。
そこには、ちゃんとアーヤが立っていたけれど
やっぱり、見えなくて。見て、もらえなくて。
「……そうか。父さんも、
一目でいいから、見たかったな」
ゆっくりとその場から目を逸らしたお父さんに、
どうしても、いま、言わなきゃいけないと思った。
「あの……！」
突然立ち上がった僕を、アーヤの家族も、
そしてみんなも、目を丸くして見ていた。
「……これ、さっき、見つけた物です。
アーヤの、立花彩さんの、日記みたいで」
「ごめんね、それは鍵がなくて……、」
「ノートの裏に貼ってありました」
これは、ほんとうは、
若武が言うべきことなんだろうけど。
でも、言わずにはいられなかった。
あんな、さびしそうな顔をさせて。
あんな、儚げな笑みを浮かべさせて。
なにが贖罪だ。なにが懺悔だ。
この時間も、限られた
すべてを、彼女のために使いたいのなら。
この場で彼女の心をすくわずに、
何ができるというのか。
いま、救うことはできないけど。
せめて、ほんの一滴でも、掬わないでどうする。
「これ、には、この日記には、
彼女がどんな風に思って、何を感じ、何を抱いたのか
それがすべて記されています。
……宿り、続けています」
だからどうか。どうか、と願う。
どうか、過去に存在した彼女の
────立花彩の�牋Ν瓩�、届きますようにと。
僕らは、そう願わずには、いられないんだ。
一文字に宿り続けている願いも、祈りも
いとしさも、その全部が余さず伝わってくれたらと。
「……ありがとう。大事に読ませてもらうよ」
そうやって、僕らが繋いだものは、
口角を震わせたお父さんに、渡っていった。
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A - 完結おめでとうございます！掲載当初からずっと追ってきた作品で、毎日更新されていないか確認するぐらい大好きな作品です。本当に完結おめでとうございます。ここまでおつかれ様でした。そして、こんなに素敵で感動する、最高の作品をありがとうございます！！ (8月4日 12時) (
レス) @page50 id: 6c0c6ff6b3 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 完結おめでとうございます。主さまの書かれるどこか儚いような、綺麗でどこか切ない文章がだいすきです。 (8月3日 17時) (レス) id: 39b04079dd (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 完結おめでとうございます🎊私も天奏さんと同じでたくさん泣きまくりました。「春の向こう側で、きみを待つ」やあとがきで伝えてくれたことはとっても大切で、この話を読んで改めてまた、しっかり生きようと思わせてくれました。本当に天奏さんはすごいと思います！ (8月3日 15時) (レス) id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - わかりました！あと土下座はしないでくださいね。こっちまで申し訳ない気分になるので！ (8月1日 12時) (レス) @page42 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
天奏 - ユメさん» たいっへん長らくお待たせしてしまって土下座したい気分です有言不実行な作者ですみません……。あと一話更新したのち、完結まで突っ走れると思います！これはほんとです！！あともう少しだけ、彼らのお話に付き合ってもらえるとありがたいです。 (8月1日 9時) (レス) id: 9f30b1fbf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天奏 | 作成日時：2022年6月9日 16時
