17話 一期がひとえに ページ21
そう言えば御礼を申して
いませんでしたな
一期さんの言葉に私は首を傾げた
御礼？何のですか？と
聞き返せば、一期さんが正座し直し
向き合ってくる
この度は闇堕ち致した私を
救い出し、薬研までも
治して頂き、真に心から御礼を
申しあげます
本当にありがとうございました
頭を下げるから、私も慌てて正座し直し
頭を下げた
そんな私にまた、くすくすした笑い
恐る恐るあげた顔
一期さんが口元に手を寄せ
優しい笑みを浮かべていた
「これからは貴方の一期一振として
お側に仕えることを
お許しください、桔梗殿」
『は、はい‥//！
改めてよろしくお願いしますね、一期さん』
「はい、全身全霊をかけ
桔梗殿を御守り致します
何かあればすぐに私を頼ってください」
『はい！』
隣で微笑む桔梗殿
最初は、人間になどと思い
慕う気持ちもなく、警戒していたが
この性格とこの嘘偽りない笑顔に
だんだんと溶かされていった我が心
自然となくなった蟠り
本当に不思議な御方だ、いつの間にか
輪の中心に居られる
いなくなれば血相変えて探す私たち
私たちにとって桔梗殿が
当たり前に変わった
「熱がぶり返してもいけません
そろそろ戻りましょう
お早く床へお着き下さい」
『もう少し、もう少しだけ
いいですか？』
「ダメです、桔梗殿のお身体の方が
心配です。また倒れたら
どうするのですか？
さ、戻りましょう、桔梗殿」
『もう少しだけ
夜風に当たっていたいです
私は大丈夫ですから
一期さんはお戻りになっても
大丈夫ですよ？』
「そのような事私が許すとでも？」
『うぅ‥ですよね』
「‥私が御一緒致します
もう少しだけですからね」
『はい！』
嬉しそうに笑う桔梗殿に
私の心が一つ弾む
何故、三日月殿も髭切殿も鶴丸殿も
たった1人の女子に‥と
思っていたが
自分の中で弾んだ何かがわかった気がする
『一期さん？
私のお話、聞いてくれてました？』
「えぇ、しかと聞いておりましたよ」
『ほんとですか？
じゃぁ何か当てて見てください』
「そうですね
明日のご飯はなんですかね、とか
ですか？」
『それはそれで気になります
光忠さんが作るご飯、美味しいですから
でも、ハズレです！
やっぱり聞いてないじゃないですか』
「もう一度、お話していただけますか？」
『ちゃんと聞いてくださいね？』
「はい」
これが『愛らしい』と言う気持ち
私が桔梗殿に抱いた気持ち
内に秘めた想い
これからもひとえに我が心
貴女だけに
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作者名：ベスくん | 作成日時：2019年6月8日 23時
