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侑李side
今日はご飯をたくさん食べれなかった。
喉が少しだけ苦しくて体が怠い。
それでも大好きな大ちゃんにお勉強を教わりたくてピンクのバッグに教科書を雑に詰め込んだ。
「ゆーり、早く行こ〜!」
「うん、ちょっとまって」
筆記用具を入れてスリッパを履いて、上着を羽織るとコホリと咳がこぼれた。
それを内緒にパタパタと皆の後を追う。
院内学級は気分転換のできる楽しい場所だったのだ。
「んんっ、ゲホッ」
喉に痰が絡まっている気がしてゲホリと咳を吐き出すと、ちらりと大ちゃんに目をやった。どうやら涼介に勉強を教えていて気付いている様子はない。
ホッと一息吐きながら、深呼吸をする。
なんだか、今日はやっぱり院内学級に来ない方が良かったかもしれない。
胸の苦しさに続いて血の気の引く感覚が拭えずに、冷や汗がドバッと飛び出た。
気分が悪くなり、少しずつ息が荒くなる。
「っ、は、……せん、せ」
隣を通りかかった大ちゃんの洋服を掴むと、震えた手でぎゅっと引っ張る。
言葉がうまく出なかった。
調子が悪い、気持ち悪い。吐きそう。
そう言いたいのに体が小刻みに震える。
「侑李?大丈夫か?ゆっくり呼吸してみるか。」
異変に気づいた大ちゃんが慌てて背中に手を当てるとゆっくりと背をさすり言葉をかける。それなのに、声がうまく聞き取れない。目の前がぐるぐると回って気持ち悪い。
「ヒュッー……ッゲホゲホ!」
無意識に慌てる脳のせいか、喘息発作は随分と早く身体の感覚を奪った。倒れ込む体を大ちゃんが受け止めると、もがき苦しむ体を抱いて、PHSで何処かに連絡を入れているようだった。
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新道踏切(プロフ) - 面白くて一気読みしてしまいました!またの更新待っています(*^^*) (2020年12月4日 16時) (レス) id: 7158c48a17 (このIDを非表示/違反報告)
ちる - すごくいい話ですね!期待してます! (2020年3月8日 0時) (レス) id: 86380dcbb6 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - ちねんさんのお話を検索してこちらの小説を見つけました。続きを楽しみにしています! (2020年3月2日 16時) (レス) id: cf2ae7ce49 (このIDを非表示/違反報告)
はなん(プロフ) - 面白いお話ありがとうございます 続きを楽しみにしています! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 039a9f3787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱむこ | 作成日時:2020年2月20日 21時