第15話 ページ17
何が?と聞けるほど自分は初心じゃない
鬼の首が跳ねられる瞬間はぎゅっと目を瞑った
足元にあるであろう食い散らかされた肉片の近くにはとても寄れなかった
振り払われる血が灰になっていく様を呼吸が荒くなりながら見ていた
焼き目が均等になるように魚をひっくり返しながら石ちゃんに返事をする
「血だけならなんとか。肉とかになるとキツイかな」
『それは、思い出すからですか、それとも見たものに対する恐怖からですか』
「両方」と答えながら焼きあがった魚の1つを火から遠ざける
首が飛ぶ瞬間は自分の身体の痛みを
肉片からは命が流れ出していく恐怖を
灰になっていく様は死の実感を
乗り越えたわけじゃない。受け入れただけ
唐突だったけど受け入れるだけの実感と時間は充分にあった。まぁ現実にしたらたった数分だろうけどさ
焼きあがっていく魚を1つずつ火から遠ざけて最後の1つを遠ざけた後川の水で火を消す
『不躾な質問をしました。ごめんなさい』
「気にしてないからいいよ。寧ろ聞いてくれて嬉しいよ。私、貴女に興味無いと思われてたから」
「結構優しいんだね。ツンデレってやつ?」と茶化しながら遠ざけた焼き魚をひとまとまりにして持つ
『興味の有無やらツンデレは知りません。私はただ心陽さんに対して行ってしまった自分の非礼を詫びているだけです』
「そういうのをツンデレって言うんだよwそれと、私の事呼び捨てでいいよ。多分だけど歳近いよね?そんな感じがする」
会話に対する返し方が学生のそれっぽいし何より敬語だけど声が大人っぽくないしね。あ、でも…石に年齢ってあるのか…?てっきり中に人がいるような感じだと思ってたんだけどそうでもないのか…?
「えぇっと…まぁ貴女が呼びやすい方でいいよ!無理強いすることでもないし!」
集めた食料を胸に抱えて来た道を戻りはじめる
鬼がいる山とは思えないくらい、暖かい日差しが差し込んでいる
『…名前』
「え?あぁ考えとくって言ったやつ?」
『はい。もう考えたので貴女がどうしようもなく辛くなった時に教えます
思わずピタッと止まり、少しの沈黙の後
「…なにそれw楽しみにしないでってこと?w」
と返した
『さぁ』と素っ気ない返事をされた。やっぱりツンデレだな。可愛いやつめ!
【神様コソコソ噂話】
心陽の死因は外傷による失血死だよ!即死じゃないから暫くは意識があったんだ!苦しくはなかったみたい!すごく熱かったみたいだけどね!
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作者名:こはる | 作成日時:2020年12月16日 0時