第116話 ページ21
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茶「……そのようですな。____ならば、従順になっていただくまでです」
茶太保は思わぬ素早さで、右手に置かれていた香炉を払った。
床に落ちた香炉は粉々に砕け、むっとするような香気が漂う。
そして次の瞬間、静蘭は十人以上の覆面の男たちに周りを囲まれていた。
男たちと同じ黒い布を首筋から口、鼻へと引き上げて、くぐもった声で茶太保は笑った。
茶「意に染まぬ者を傀儡にする術など、いくらでもあります」
茶「それにあなたご自慢の劉輝様は、今頃はもう紅貴妃ともども亡くなっておられますよ」
静「な」
つと、茶太保の目が細められる。
茶「____捕らえて、閉じ込めろ」
いっせいに襲いかかって来た男たちに、静蘭は舌打ちして剣を向けた。
隙を見て切っ先から逃れた茶太保は、素早く部屋の隅に移動する。
あっという間に数人斬り捨てた静蘭は、ぐらりと目眩を感じてその場に膝をついた。
体が痺れて、剣を取り落とす。
茶「いい香でしょう?」
問いかけが遠く聞こえる。
不意に襲って来た酩酊感に、顔さえ上げられなくなる。
静「茶……」
茶「少し、お休みください。次にお目覚めの時には、玉座におられましょう」
茶太保は笑って踵を返した。
男たちに腕を掴まれ、頭に靄がかかり始める。
けれど静蘭はそのまま素直に意識を失ったりはしなかった。
____清苑様。あなたは、そのままが一番良いと私は思います。
頭に浮かんでくるのは、その笑顔で、自分に大切なことを教えてくれたAの姿で。
背を向けた茶太保を追って、静蘭の双眸がきらめく。
長剣を脇に差した短剣を震える指で抜き、ためらわず自分の腿に突き立てた。
痛みで得た一瞬の覚醒で、掴まれていた腕を振りほどき、そして自分の血で濡れた短剣を、茶太保に向かって投げ放ったのである。
短剣は真っ直ぐに茶太保の背に刺さった。
だがすぐに取り押さえられ、男たちの激しい殴打を受けて静蘭は気を失った。
茶「くっ……」
刃の痛みにふらつき、なんとか踏みとどまった茶太保が振り返ったその時だった。
ヒュッと微かな風切り音がしたと思うと、十人以上いた男たちのうちの半数の首が胴から転がり落ちた。
そして更に、残りの男たちの首が落ちる。
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咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2021年4月30日 0時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - ラフェルさん、ありがとうございます!!更新できなくてすみません。時間が無かったり、学生として忙しかったりするので、なかなか出来ていないのが現状です。申し訳ありません!出来るだけ頑張ります。 (2020年6月22日 14時) (レス) id: 81545e79a5 (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - すみません、分かりにくかったでしょうか?オチは決まっているので、お話が進むのをもう少し待っていただけると嬉しいです (2019年6月1日 8時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - オチは決まってるんでしょうか?なんだか先が見えなくてモヤモヤします。 (2019年6月1日 7時) (レス) id: e7610b422d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年4月20日 16時