忘れられない人_kwmr ページ5
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今日の東大は、制服姿の高校生でごった返していた。
「理一を見学する人は僕に着いてきてください」
拡声器片手にそう叫べば、ズラズラと人の線が出来る。
───────嗚呼、懐かしい
自分もかつては彼らと同じように並んで、この“東京大学”という舞台に期待を寄せていた。
「…あの」
そんな物思いにフケていると、俺を呼び止める声が聞こえてくる。
「…どうされました?」
俺がそう尋ねれば、高校生は顔を上げた。
「…今度、私が作ったクイズを見て貰えませんか」
正直“何言ってるんだろう”って言うのが本音だった。
受験生がクイズ制作?
その根性が凄いと思った。
「急にすみません。失礼しました。」
そう、頭を下げた1人の高校生。
その時は髪も長くてどちらかと言うと根暗な印象だった。
「新しく加入することになったAAさんです」
紹介されてペコりと頭を下げた女性を見て、思わず声を出した。
「…あの時の」
「はい。お久しぶりです。」
あの頃から変わらないりんとした声に耳を奪われる。
ずっとこの声が頭に残っていた。
「ようこそ、QuizKnockへ」
そう言うと、照れくさそうに少し笑った。
「ありがとうございます。」
その笑顔が、あまりにも綺麗で思わずずっと見つめてしまった。
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