Accueil【伊沢拓司】 (ページ10)

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川上side

美味しそうに頬張る彼女を見て、思わず写真を撮ってしまう。

可愛いな、なんて呟きは心の中にしまった。

「相変わらず好きですね、ここのカルボナーラ」

「うん、これに勝てるカルボナーラは存在しないと思ってる」

柔らかく笑いながらそう言った彼女は再びカルボナーラを口に含んだ。

「伊沢さんに自慢してもいいですか？」

「拓司に？いいけど…」

“自慢になるの？”

そう言いたげな目を向けてくる彼女に微笑みかける。

彼ならきっと、飛びついてくるはずだ。

確信にも似た推測をしながら、俺は彼に写真を送り付けた。

彼にしては珍しく、既読はすぐにつき、俺を全力で罵るメッセージが届く。

大切にしているということがヒシヒシと伝わってきた。

「拓朗は食べないの？」

「あぁ、俺は───────」

“俺は大丈夫です”

俺はその言葉を飲み込んでしまった。

「食べさせてくれるんですか？」

「ん？いいよ？食べたかったのなら予(あらかじ)め言っておいてくれればよかったのに」

慣れた手で、フォークにくるくるとカルボナーラを巻き付け、俺の口元にそれを持っていく。

「はい、どうぞ？」

その笑顔に、思わず目を伏せてしまう。

「ありがとうございます」

カルボナーラなんて、あまり得意じゃないのに。

彼女が食べさせてくれるなら、と食べてしまう自分の単純さに笑いすら込み上げてきた。