Accueil【伊沢拓司】 (ページ42)

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水上side

「颯くん、忙しいのにごめんね」

「Aさんも伊沢さんもそればっかり言いますね」

俺は読んでいた本をパタリと閉じると、机に身を乗り出し、Aさんの頬を掴んだ。

「俺は、人として貴方のことが大好きなんです。そんな人の助けになりたいなんて、当たり前のことですよ」

彼女の瞳から、一切目をそらさずにそう言えば、彼女は少し照れたのか、目を伏せた。

「…ありがとう、颯くん」

彼女はいつだって真っ直ぐで、いつだって優しい。

川上や須貝さんが彼女に惚れ込んでしまうのも仕方ないというか、ある種当たり前なのかもしれない。

それでも、自分の中にある芯を曲げることはないんだから、彼女は本当に強い人だよ。

「…水上、あとはいい？」

「大丈夫です。明日の俺の担当の先生は、Aさんの主治医ですし、連行しますね」

俺がそう言うと、三守さんは安心したように笑みを見せた。

「じゃあ、よろしく」

そう言って颯爽と帰る三守さんの背中は、かつて俺が見ていたそれよりも、遥かに大きくなっていた。

「なんか、みんな大きくなっちゃうね」

「そりゃ、成長もしますよ」

俺がそう言えば、彼女は少し寂しそうな顔をした後、無理をして口角を上げた。

「…私だけが変わらないなぁ」

その表情は、俺たちに両親のことを話してくれた時のそれと瓜二つだった。