Accueil【伊沢拓司】 (ページ31)

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伊沢side

『俺が両親の記憶を失っていたら、知りたいって思いますよ』

こうちゃんのその言葉は、俺が気にしていたことそのものだった。

Aに両親のことを聞かれてもそれとなく誤魔化していた。

知りたいって思うのは当たり前のことだと思う。

もし俺が彼女の立場なら、知りたいって思う。

でも、両親が両親なだけなぁ…

そんなことを思いながら東大の図書館でパソコンを打っていると、後ろから声をかけられた。

「伊沢さんがわざわざ東大に来るなんて珍しいですね」

「川上じゃん、文献探し？」

“そんなところです”

俺の問いかけにそう答えた川上は分厚い本を片手に俺の正面に座った。

「何悩んでるんですか？」

「…やっぱり俺、悩んでる顔してる？」

「まぁ。伊沢さん案外わかりやすいですから」

川上は文献から顔を逸らせることなく俺の相手をしている。

目を見られないって意外といいじゃん、なんて思いながら俺もパソコンに目を向けた。

「Aさん関連ですか？」

「そんなところ。俺ってそこまでわかりやすいかな」

「…伊沢さんがそこまで悩むのなんてAさん関連くらいしかないやないですか」

“QuizKnockのことでも全力で悩むから”

川上の返答に俺はこう返すと、川上はクスッと音を立てて笑った。

「…何？」

「いや。そういう方が伊沢さんらしいですよ」

川上のその言葉は、どこか柔らかさがあって、全力で否定できない自分がいた。