Accueil【伊沢拓司】 (ページ29)

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水上side

「水上くん、篠宮さんのこと好きなんだね」

「…私情は挟むつもりはないですから」

先生はそんな俺を見て、目を丸くさせた。

「君がそんなことをするようには到底見えないがね」

先生はそう言うと、彼女のカルテに目を通した。

「Aさん、まだ解決の目処立たないんですか？」

「んー…彼女の回復力は異常だと認識してるよ」

先生のその言い方は、まるで彼女の回復力が他の人よりも劣っているように感じさせた。

「そうなんですか？」

思わず暗くなってしまった自分の声色に、先生は少しおかしげに笑った。

「いい方の意味の異常だから」

俺は思わず恥ずかしくなって顔を伏せた。

「…水上くんは彼とは“東大王”って関係だけでは無さそうだね」

「…そう、ですね」

俺が伊沢さんにお願いしたことを考えれば、ただの“東大王”という関係性だけではなくなる。

「深く聞くつもりはないが、医師としての道を見誤ってはダメだよ」

「わかっています」

俺がお願いしたことは、もしかしたら医師としての道という面では正しくないのかもしれない。

けれど、彼女の友人としてなら、間違いなく正しかったと思う。

「…いや、思いたいだけかな」

俺のつぶやきに先生が目を向けてきたけれど、それには気が付かないふりをした。