Accueil【伊沢拓司】 (ページ28)

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伊沢side

「良かったね、これからリハビリ始められるって」

「うん、少しづつ普段の生活に戻れているって実感する」

俺の言葉に、Aは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべながら答えた。

「でも颯くんにリハビリ本当に辛いよって脅されちゃった」

入院中に言われたらしい。

彼女の苦い顔に俺も思わず苦笑いを浮かべてしまった。

“颯くん”

同時に、彼女が水上のことを下の名前で呼んでいることを思い出した。

男女分け隔てなく、みんなに対して優しい彼女は以前と変わらずにみんなから好かれている。

下の名前で呼んでいるのは水上だけじゃないし、俺の気にしすぎだし。

「ちゃんとサポートするから頑張ろ」

「ふふ、拓司がサポーターなのは心強いなー」

笑顔を浮かべるAの頭を撫でれば、彼女は擽ったそうに目を細める。

そんな動作も勿論好きで。

「俺が居ない日はファルさんか福良さんかこうちゃんに頼ってね」

「ふふ、わかったよ。ありがとう」

その3人なら間違いなく安全だし。

俺が純粋に心配しているだけだと思ったらしいAはいつだって心の底からのお礼を言ってくれる。

「…Aの彼氏は俺だからね？」

確認の意味でそう言えば、彼女は目を見開いた。

「何当たり前のこと言ってるの？」

それは彼女からの告白や愛の言葉なんかよりも俺には強烈で、深く心に刺さった。

「言いたかったから」

「変な拓司」

“行こ？”

首を傾げたAに頷き、俺はゆっくりと彼女の車椅子を押すのだった。