流れる季節の真ん中で(磁石) (ページ35)

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エピローグページ35

「おはよう」

女性が石に語りかけた。

「もう来てくれてたんだ。また挨拶しに行かなきゃね」

その石の前には、花束とお酒といくつかのお菓子やおつまみがあった。

あれから3年が経っていた。彼らは20歳で、1月に成人式を終えたのだった。

「今頃二宮くんとでも飲んでるの？たまにはお姉ちゃんも仲間に入れて欲しいなぁ」

女性の手にも1本、缶があった。

石の前にある缶にカツンと当てて、女性、否、Aは缶に口をつけた。

「今日の晩ご飯、オムライスだって。楽しみだね」

少し大きめの独り言。しかしこの場ではそう珍しいことではない。誰もがそんなことをしたがる場所だから。

「お姉ちゃんね、子供産まれるんだよ。名前ね？翔っていう字を使いたいねって話してた」

「でも女の子なんだよね、何かない？」

現れたのは病院図書館の管理人、松本潤だった。

Aは、櫻井Aから松本Aになっていた。

「ゆっくり考えてみるよ。A、そろそろ行こっか」

花を置き、その場を離れた。

ふと、鞄の中からケータイを出しイヤフォンを装着し、鼻歌を歌い始めた。

ケータイに表示されたのは、3月9日だった。