17 ページ18
和也は走った___なんて、メロスの冒頭を走りながら思い出す。最も、走る理由は違うのだけれど。
友達からのカラオケの誘いも断り、女子からのゲーセンの誘いも断り…不思議に思った友人が俺の後をつけてたらどうしよう…そんなことないんだけれど。
目的地に着き、走ることをやめ早歩きへ。さすがにここでは走ることはできない。怒られるから。
デイルームへと近付くと、聞こえてくるピアノの音。3月9日。彼の音色。
「もうこんなに弾けんの？」
「あ、和。ふふ、頑張ったもん。」
「検査は？どうだったの？」
「俺、修学旅行行けるんだよ！」
「本当！？」
勢いよく立ち上がって嬉しそうに話す彼に、俺も思わずにやけてしまう。
__ふふ、それ計画したの俺なんだぜ翔ちゃん。
「修学旅行楽しみだね。しおり持ってきたんだ。あとで一緒に見よ？」
「うん！」
都合良すぎるだろって？そんなの気にすんなよ。俺の計算なんだから。
「その前に…図書館行くんでしょ？」
「そうだった！潤くんに報告しないと！」
潤くん？また違う名前が出てきたぞ。もう俺覚えられねーよ。
「今度は何借りるの？」
「しばらく借りないよ？だって修学旅行終わったら一旦退院するから。」
「え、退院もできんの？」
「だって頑張ったもん。」
ドヤ顔でピースサインを作る翔ちゃん。ということは学校も一緒に行けんの？まさかまさかのピアノも本番弾けんの？
「和、ありがとう。」
「俺何もしてないよ。翔ちゃんが頑張ったからじゃない。凄いよ。おめでとう。」
努力は人を裏切らないってこういうことか。これからはその言葉信じるよ。だって証明してくれた人が隣にいるんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：永遠-towa- | 作者ホームページ：
作成日時：2015年12月28日 11時
