とくさつ短編集 (ページ4)

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桐生戦兎に助けてもらうページ4

仮面ライダービルド

自動ドアが開くと、空はもうすっかりオレンジ色だった。予定より買い物が長引いた事に気付いたAは、ふと腕時計をみた。午後5時48分。今から帰って夕飯を作ったら、食べる頃には7時になってしまうだろうか。徒歩で帰るには買い込みすぎたな…と、ぼんやり思考しながら帰路に着こうとする。
ドンッ！！
瞬間、すぐ近くで爆発音が響いた。弾かれるように振り向くと、自分より一回り近く大きい人型のナニカが、尻もちを着いた8歳くらいの少女を睨んでいた。1歩、1歩とナニカは少女と距離を詰め、少女はどこに居るかも分からない母親を呼んで泣いた。歩行中だった人々は悲鳴をあげて逃げ惑い、瞬く間に辺りは混乱の空気が走る。
ドンッ！！
また爆発音が耳をつんざいた。少女への直撃は免れたものの、奴の右腕らしき部分から放たれたソレは地面を抉っていた。足が竦み手が震え、買い物袋が音を立てて地面に落ちる。
奴は鋭い目線を少女からAに変えた。Aは助けを求める声ではなく、何故か少女に逃げろと叫んでいた。少女は泣いて戸惑った様子のまま走った。走って走って姿が見えなくなると、奴は彼女を逃がした自分に怒っているようだった。突如迫った死を前にして、あろう事か見ず知らずの少女を守れて良かったと安心していた。場違いなほど冷静だと考える余裕もあった。怪物は重々しい足音を立てながら、銃口によく似た右腕をAに向けた。欲を言えば、生きている内にいい男性と出会って居たかったと拍子抜けなことを思いながら、諦めて目を閉じた。

「死ぬ覚悟は出来てるって？見かけによらず根性あんだな」
爆発音は無い。痛みも感じない代わりに、爽やかな青年の声が聞こえた。舞い上がった砂埃に咳き込んで細く目を開けば、視界には赤と青が輝いていた。混乱しているAを他所に、赤と青の誰かが言う。
「大丈夫。そんな事させない」
アナタは誰かと、反射的に聞いた。
「強いて言えば、超強くて天っ才な正義のヒーローってとこかな」
勝利の法則は決まった。彼は飄々とそう言い放つ。
あんなに恐ろしかった怪物は、彼の圧倒的な戦闘センスで途端に態勢を崩していく。彼の強さは本物だった。その後怪物は1発も攻撃を放つこと無く、強烈なキックをもろに受けてその場に倒れた。