【五条悟】－１と＋１の虚構 (ページ20)

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理子さんは黒井さんとの今生の別れを後にし、夏油くんと共に薨星宮(こうせいぐう)本殿へと進んで行った。

先へと続く複数のトンネルは先が一切見えない。

「･･･これで、よかったんですよね。

これが理子様の使命なんですからっ、私、泣いてばかりで･･･」

彼女の言葉に出来ない思いが分かり、私は彼女の背に手を回した。

そんな様子の彼女に、私は余計な事を言ってしまった。

「･･･実は、理子さんにはまだ選択が残されているんです。」

「･･･選択、ですか？」

「黒井さんの希望が叶うかは分からないです。ですがもうそろそろ、夏油くんが彼女に尋ねている筈です。「戻らないか？」と。」

「それはっ･･･！」

「勿論分かっています。そうする事で天元様に背信してしまう事は。

ただ、今回の依頼内容を聞いた際、彼女の「＂護衛＂と＂抹消＂」と言われたんです。

最初は意味が分からなかったんんですが、昨日彼らが話していて理解かりました。

理子さんは、理子さんの望むものを手に入れればいいんです。彼女が望むのであればーー黒井さん、貴方も望むべきだと、私は思います。」

「わ、わたしは･･･望んではいけない事だと、おも"っでおりました･･･！

それなのにこんな･･･！こんな幸せなことが、あってもいいのでしょうか？」

「貴女達が幸せになってくれないと、私達が困ってしまいます。

理子さんもきっと、貴女を望んでいますよ。

だから彼女を待ちましょう。」

「っはい･･･！」

涙を流しながら手を抱える彼女を支え、背中を摩った。

理子さんの選択を待ち望む中、聞き慣れた金属音が聞こえた。

咄嗟に黒井さんを押し倒したと同時に、左腕に激しい衝撃が加わった。

パァンという破裂音のした方向を見遣ると、其処には私達を誘拐したあの男が立っていた。

「感動の場面で悪いが、邪魔させて貰うぜ。」

「貴方は･･･。」

男がこの場に居ることが、私に最悪の光景を想起させた。

しかし式神の反応が消えていない事から、彼はまだ死んでいないと頭を振った。

「･･･愚問だとは思いますが、五条くんは？」

「俺が殺した。」

成程、この男は彼が死んだものだと思っているのか。

その事が私に若干の余裕を持たせた。

私は黒井さんを背後に促し、熱を持った腕で霊符を放った。

各所に式神を霧散させ、男へクナイを振りかぶった。