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遠くで声が聞こえる。
誰かと誰かの話す声。
投げられて受け身も取れぬまま着地した所為か、先程よりも意識が朦朧としていた。
何も見えない、聞こえない状態で何も出来ずに暫く居ると、両腕の拘束と目隠しが外された。
眩しさに目を細めて少し、光景が輪郭を帯びてきた。
「...い、おい!確りしろ!」
「...ご、じょう、くん...?」
微妙にぼやけたままの視界でも、目の前には愛しい存在が確かに居た。
先程とは異なり、背中と膝裏に回された腕は居心地が良かった。
丁寧に扱おうとしてくれている揺れが心地好く、見上げるこの光景がいつまでも続けばいいと思った。
数分程運ばれると、何処かの茂みに連れられた。
その場に降ろされてお尻を着地させると、後頭部に手を回された。
「胃の中に薬が残ってるかもしれねえから、吐き出させるぞ。」
有無を言わさぬ圧に何となく頷くと、軽く開いた口内に彼の指が2本進入した。
喉奥の方まで進み舌を押さえられると、異物を押し出すように吐き気を催した。
「...っ、ぉえっ、おえっ」
軽く嘔吐くも、唾液と少しの胃液が出るばかり。
もう一度指が舌を押さえると、先程より何処か甘味を持った胃液が逆流してきた。
五条君の手を汚してこんなことをさせている事実への申し訳なさと、嘔吐への気持ち悪さから涙がポタポタと落ちた。
口の中から抜き出された指と手は、歪んだ視界でも分かってしまう程に唾液と胃液とで汚れていた。
彼はペットボトルの水で手を濯いだ後、私の口元へ水をかけ、口内へ流し入れた。
「1回口濯いで出せ。」
1度水を吐き出した後、半分程あったペットボトルの水を飲み干した。
再び彼に抱えられると、他の皆の元へ合流した。
まだ意識が確りしないのか、夏油君達が何か言っていても聞き取れない。
何故か五条君の声だけがはっきりとしていた。
曖昧に笑うと、彼らは進み初めた。
何処かの宿へ向かい、私は黒井さんに預けられた。
汚れた身なりや着替えなど、本職のメイドさんにかかればあっという間に終わった。
五条君のお陰か、予想よりも数段早く容態が安定し、私も(何故か)海水浴に同行することが出来た。
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カナデ(プロフ) - 好きです!!更新頑張ってください! (2022年10月26日 20時) (レス) @page21 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬×3 | 作成日時:2021年12月30日 16時