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目が覚めると、窓から射し込む光によって室内が満たされていた。
西洋様式の装飾を暫く見回し、そこで自身が異世界にやって来たことを改めて実感した。
テーブルに畳まれた服が用意してあり、傍らにメモが1枚。
ーーお早う御座います。お支度が整い次第お迎えに上がります。ーー
達筆ではないが読み易い文字…といっても英語なのだが、その横には「Latt」とあった。
どうやって支度が済んだタイミングを見計らうのだろうかと考えるも、元の世界で得た知識をもとに、洗面器で顔を洗った。
不思議な事に、服に袖を通すとサイズが丁度良かった。
取り敢えず部屋の扉を開けると、目の前に笑顔のラトがいた。
「わっ…」
咄嗟に後ろに重心をかけた為、バランスが取れず体が傾いた。
状況を理解する間もなく、ラトに腕を引かれて体勢を支えられた。
「おやおや、大丈夫ですか?」
「ら、ラト…有難う。」
「驚かせてしまいましたね。申し訳御座いません。」
「いや…大丈夫。」
「お早う御座います主様。朝食のご用意は出来ていますが、何方でお召し上がりになりますか?」
「選べるの?」
「勿論。食堂は騒がしいので…自室やテラスなどもお持ち出来ますよ。」
「それなら…テラスで食べたい。」
「かしこまりました。」
後から無理を言っただろうかと考えたが、ラトは嫌な顔ひとつせずテラスへ案内してくれた。
地上から離れた高さのテラスにはガラス張りの屋根が着いており、屋敷を囲う木々の隙間から朝の木漏れ日が射し込んでいた。
設置されたインテリアは白で統一されており、テラスには涼風が吹き抜けていた。
「わ……綺麗…」
感嘆が思わず漏れると、ラトは綺麗に「ふふふっ」と笑った。
(笑った…)
「直ぐにお持ちしますね。」
彼は会った時から微笑んでいたが、笑った顔はまた違っており胸の奥が何だか暖かくなった。
大人しく待っていると、ラトがバスケットを片手に戻って来た。
蓋が開けられると、中にはサンドウィッチが沢山入っていた。
「凄く美味しそう。」
「ロノ君…調理担当の執事が意気込んで作っていたので、きっと美味しいですよ。」
手が直接触れないよう包装紙で巻かれたサンドウィッチには、簡単な作り方とは反し、手間が掛けられている事は明らかだった。
卵サンドを手に取り口へ運ぶと、柔らかくもしっかりした味が広がった。
「…っ!」
「美味しいのですね。急がずともサンドウィッチは逃げませんよ。」
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橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年6月7日 20時) (レス) @page7 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
馬×3(プロフ) - マリイ(七海建人の嫁・治崎廻信者)さん» ミヤジの獣耳なら許します。異論も認めます。 (2022年4月10日 12時) (レス) id: 85cef96c0c (このIDを非表示/違反報告)
マリイ(七海建人の嫁・治崎廻信者) - 私はミヤジが好きです (2022年4月10日 9時) (レス) id: 70be676ed1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬×3 | 作成日時:2022年4月10日 3時