Aimer Ⅱ (ページ5)

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うん……、と苦笑いし頷いたままAは眉を下げる。どこか自信なさげでやっぱり寂しそうだ。

『でも私今まで遥輝がプロ野球選手になって、遠くなったって思ってずっと避けてたんだよ？
出身地を隠してるのも西川遥輝との関わりがバレたくないからやし。
実は取材がきっかけで好きになりました、一緒にいたいです、なんて都合がいいやんか……』

「それ、関係ある？」

『あるよ！』

「じゃあ何でAはさ、どうして西川選手との関わりを戻したの？」

『……遥輝の戻りたいって気持ちと目が切実だったし、また素顔の遥輝を知りたかったから』

「Aは毎日西川選手が電話かけてきても鬱陶しいとは思わないの？」

『またか、とは思うけど嬉しい』

Aは気づいているだろうか。西川選手の話をするAはどこかつれなくて、心もとない表情をする。

でも誰のことを話すよりも、温和で優しい眼差しを向けている。飾らない素の関西弁が出ている。

『私恋愛しちゃいかんのやろ？ ……するとしたら、相手は東海オンエアの誰かじゃないと、いかんのやろ？』

声が震えている。丸っこい瞳からハラリと滴が溢れる。

「Aちゃん！？」

『ごめん……』

ポロポロ涙を流すAに澪が慌ててティッシュを渡した。心が痛くなった。

僕達は縛り付けすぎた。恋に悩む1人の女の子、1人の女性を泣かせてしまった。

『まさかね、こんなに好きだったなんて、思わなかったの……』

「うん……」

『恋愛しないでっていうのも、冗談だって思ってたはずやのに、意外と真に受けとったみたい……』

亮くん、ごめん。どうやら僕はこれ以上亮くんの恋を応援できそうにない。それどころか怒りすら沸いてくる。

頬を伝う涙は止まることを知らない。澪もつられて泣きそうになっている。

僕は一応東海オンエアの中で常識人の立ち位置にある。そんな僕がAの気持ちを察せなかった。東海オンエアの誰よりも付き合いが長く、1番の理解者であろうと決意した結成当初を忘れかけていた。

「……A」

『ん……？』

鼻をすする。涙に濡れた瞳はLEDライトに照らされている。

「Aのその気持ち、大切にしてね？」

『へっ？』

「AはAだから。誰に邪魔されても自分を貫いてよ」

僕は決意した。Aが1番に幸せになれるように応援する。