＊ ページ35
.
Aは気づいてんのやろうか。
『ねえ、遥輝』
「ん？」
『こんな質問をするのは重い女っぽいから躊躇うんやけどさ……』
何で私なの、とポツリと呟く。水滴が1つ、静かに落ちるようなか細い声は恥ずかしがり屋のままだ。
何で……、か。ドライブしながら少し考えてみる。
「……そうやなあ」
”遥輝はAちゃんの護衛みたいになってる”
”ほんまは好きなんちゃうか？”
”他の女の子と扱いが違う”
”はよ付き合え”
小学校高学年から中学生にかけて、周りに言われ続けてきた。
”実は俺らの知らん所で付き合ってんのちゃうか？”
そんな疑いをかけられるほどに俺らは仲が良かったと思う。
でも鈍感やった俺は周りのアシストを避け、Aへの気持ちに気づけずにいた。いや、気づこうとしなかった。気づかないふりをしていた。
”幼馴染”という確実で曖昧な関係に甘んじていた。
”はるきー、今日お母さんが家おいでやってー”
”おう！ 練習終わったら行くわ！”
これからもずっと一緒やと思っていた。高校は別々になってまうけど、家が近いし家族付き合いもあるからずっとこのままでおれると。
”ねえ、遥輝”
”ん？ どうしたん？”
”あのね、お父さんが春から3年間愛知でお仕事せなあかんくなったの”
”……おう”
”最初はパパの単身赴任の予定やってんけど私も愛知に行ってみたくて、着いていくことにした”
その瞳は驚くほどにまっすぐと未来を見据えていた。卒業式翌日の夜、離ればなれになる運命を知った。
”遥輝が頑張るから私も頑張りたい”
”うん”
”そんな寂しい顔せんとってよ！ 会えなくなる訳やないんやで？”
Aがいなくなる恐怖と不安。また会える確証はない。
……勝手に大人にならんといて。俺の前では子供のままのAでおってくれよ……
”そ、そうやな……”
事実を消化するには時間がかかった。
入学前やったけど、高校では野球の練習が始まっていた。
ほんまはAと一緒におりたかった。練習なんてほっぽり出して少しでも思い出を作りたかった。
”行かないで”
これが本音だ。でも言えないから……
次に会う時は夢を叶えていよう──
別れの日、ありきたりな言葉に俺の精一杯の強がりをぶつけた。Aも笑顔で頷いてくれたはずやった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あおやなぎ(プロフ) - jvdybxhnchvさん» ありがとうございます！ 頑張ります(^^) (2019年11月21日 17時) (
レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
jvdybxhnchv(プロフ) - すごく大好きな作品です！更新頑張ってください！！！ (2019年11月18日 21時) (レス) id: eb93799d33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2019年10月15日 20時
