Aimer Ⅱ (ページ36)

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高校に入ってからは母親伝いにしか近況を聞かなかった。彼女もできたしむやみにAとの関わりを持ったら疑われてしまう。

”何で？ほんまにそれでええの？”

”ええねん。Aモテるし、あっちで彼氏作ってるやろ”

あかりさんにはがっかりした、と呆れられた。ズキッと痛んだ胸の理由にも蓋をした。

多忙で電話をかける暇もない。毎日ヘトヘトで声を聞くよりも眠りたい。電話もかかってこない。

それが自然と隔たりを作り、成人式以降の俺達を引き裂いた。それでも気付こうとしなかったのは、気付いてしまったら今までの俺達ではいられなくなるのを悟っていたから。

でもAと触れ合えるようになって、この気持ちは呆気なく爆発した。”幼馴染”なんて不安定な関係で満足できない。ただでさえライバルが多いのに、野放しにしてられへん。

Aのことは俺が1番知ってるつもり。俺やったらAを幸せにできるし、してみせる。心から惚れてしまったからこそ、誰にも渡したくない。俺がAを最後の女やと思うように、Aにも俺が最後であってほしい。

色んな女性を見てきた。でも琴線に触れたのはAだけ。……1度離した手は、もう2度と離したくない。

「やからAなんやで？」

珍しく熱くなってしまった。黙りこくったAはどんな顔をしてんのやろう。パッと助手席を見れば……、

「寝とんのかい！」

『はっ！』

気持ちよさそうに眠っていた。しっぺ返しすれば、絵に描いたように飛び起きる。

「せっかく俺が愛を語ったのに何寝てくれてんねん！！」

『ごめん、気づいたら落ちてた……』

「ったく……」

でもそういう所も好きやと思う。完全に惚れた弱みだ。

『もし良かったら、もう1回教えて……？』

「嫌や。また眠られたら困るもん」

拗ねたふりをすれば簡単に騙される。シュンとして小さい体を縮こませる。

「許したるから、俺の言うこと聞いて」

『何でもします』

言うたな？

「じゃあチューして。ほっぺやなくて唇に、やで」

『ええ……』

「じゃあ許さん」

恥ずかしそうに唇をキュッと結ぶ。俺はスーパーに車を停める。

『……ねえ、遥輝』

「ん？」

覚悟を決めたAは俺の服をギュッと握り、背を伸ばして一瞬だけ唇に触れた。

……次に愛を語るのはジジイとババアになった時やろうか。