Aimer Ⅱ (ページ18)

今日:14 hit、昨日:6 hit、合計:174,402 hit

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”ライトへ！ライトへ！ライトへ！ライトへ！ライトへ！
サヨナラ！満塁！ホームラーン！！！”

実況の興奮した声と、

”ホームランはないやろお……”

解説者の意気消沈した声が対照的だった。そういえば今日の解説は広島のOBか。

「そこで打つか……！？」

「すげえ興奮したけどカープ負けた……」

「やべえな、西川のメンタルバカつええ」

3人は感心しつつも、どこかがっかりしている。

『……っ、』

この部屋の中で活躍と勝利を喜んでいるのは私だけだ。雄叫びを上げてホームへ帰ってくる遥輝をファイターズの選手達が出迎える。

皆弾けて、喜んで、水浸しになって、胸がいっぱいになった。遥輝かっこいい。すごい。ホッとした瞬間涙が溢れた。

「えっ、泣いてる？」

「もしかしてAって西川のファンだった？」

『……っ、違うっ……』

「いやいや、ファンの反応じゃん」

お酒が入っていたのもあると思う。それを抜きにしても感動と喜びと興奮で涙が止まらなかった。鳥肌も立っている。

彼をずっと応援してきて良かった、と思わずにいられなかった。

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その日の夜、岡崎に戻ってきてからお姉ちゃんに電話をかけた。

『お姉ちゃん？』

「A？どうしたん？」

お姉ちゃんだけど血縁はない。お姉ちゃんは2個上の遥輝の実のお姉さんだ。

『遥輝、すごかったね』

遥輝との繋がりが途切れても双方の家族間の縁故は途切れず、おじちゃんとおばちゃん、お姉ちゃんとは実家に帰る度に会っていた。

お姉ちゃんは姉がいない私を、本当の妹のように可愛がってくれる。

「あのくそ生意気な弟とは思われへんかったわ」

苦笑いするのも無理はない。お姉ちゃんの言う通り、ガキんちょだった。

「でもAが遥輝の話題を出すなんて珍しいなあ。遂に仲直りする気になった？」

『……それはまだ、かな』

「そっか」

『でもね、遥輝を信じて良かった』

「Aは遥輝ならやってくれるって思ってたん？」

『うん』

西川遥輝は気持ちが乗ると、体まで動いてくる。火事場の馬鹿力が働く人だ。

田中選手や中島選手のチャンスメイク、岡選手のデッドボールからの乱闘未遂、2死満塁の場面でチャンスが回ってきた。武者震いしたに違いない。

チャンスを物にした遥輝はヒーローになった。ドラマの主役に躍り出た。