Aimer Ⅱ (ページ16)

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ピアノだけでなくギターをかき鳴らし、歌声を響かせる。試合で自分の思い通りのプレイができずに凹んだ時、Aが配信していると元気が出た。

どんな時でも楽しげに、曲によっては悲しそうに歌う姿が美しかった。

……俺の知らん所でAも頑張ってるんやな。俺も頑張ろうって切り替えられた。

『泣き顔怒った顔突然唇に触れた唇も
そばにいると誓った証』

でも俺の知らん所で、知らない輩に恍惚の表情を見せているかもしれへんのはどうしても嫌やった。

この気持ちに気づくずっと前から黒いモヤがかかるようになった。りょうってやつと交際の噂が立つ度に、Aが否定してもりょうがあやふやにする度に、モヤモヤが黒を極めるようになった。

”ねえ西川くん、それが恋やん。あんた今嫉妬してるよ？”

”ほんまにそれはないって”

”どこにその確証があんの？”

”いや、な？ただ俺がAに避けられまくってんのに、他の輩には笑顔振りまいてるから、それが嫌なだけやねんって……”

”ふーん”

あかりさんに尋問を受けて焦ってたのもきっと、そういうこと。

『……はいっ、1時間ほど経ちましたね。今日はこれで終わります。
明日は休み明けの学校と仕事ですね。
正直面倒くさい気持ちが勝るけどお互い頑張りましょう！
それでは皆さん、次の生配信でお会いしましょう。
ばいばーい！』

今日はまともにAの声を聞けなかった。全てが筒抜けになってしまった。

会いたいが故に押しかけてみた。でも思ったよりも簡単に気持ちが爆発してしまいそうになっている。

『遥輝ー、起きてる？』

「……っ、起きてんで！」

24になってそろそろ結婚する友達も増えてきた。自分もいつかは結婚したいし、子供も欲しい。

『あら、寝てるかと思った』

「何か眠られへん」

『修学旅行のテンションになってんのちゃう？』

「多分今、ヤニ切れ……」

『まだ言うか。私大抵の事は受け入れるけど、それだけは絶対に譲らないからね』

でも結婚する自分を想像できなかった。相手を身近な相手に当てはめてみても、誰もしっくりこなかった。

『ねえ遥輝』

「ん？」

『……おやすみ』

顔を近づけてニコッと微笑む。可愛いのに色気を伴うその表情は初めて見たものだった。

後ろ姿を見送った後、1人赤面して布団の中で悶絶した。