Aimer Ⅱ (ページ11)

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やっぱり女の子の家に押しかけるなんてあかんかったかな……

『早く！ちゃんと着て！』

「安心してください、穿いてますよ！」

笑わせたい一心で渾身のモノマネをしてみるも、Aの目はより一層険しくなる。

『涼みたいか、股間蹴られたいか、そのまま外に出されるか、どれがいい？』

「すみません、着てきます」

これ以上刺激すると恐ろしい目に遭いそうやったから、大人しくスーツケースからスウェットを取り出した。でもAも人のこと言えへんと思う。

白のオフショルダーニットワンピースなんてあかんやん。茶色のタイツ履いてて生足やないだけええのかもしれんけど、そんな格好で夜の街を彷徨いとったら男はひとたまりもないで……

少なくとも俺は現在進行形でドキドキしとるんやけど……

上下真っ黒のセットアップを着ていると、独り言が聞こえてくる。

『でも安村やるやつ初めて見た……』

ふふっ、と小さく笑う。俺が来てから表情の硬かったAがやっと笑ってくれた。

「……A、笑っとけ」

『はあ？』

変なの、とAは朗らかに微笑みかけた。やっぱり笑うAは可愛い。今は小っ恥ずかしいから言えへんけど、いつかは面と向かって言えるようになれるんかな。そんな関係になりたいな。

この家のキッチンはカウンター式になっていて、ご丁寧にカウンターチェアが1つ置いてある。そこに座ってIHクッキングヒーターを覗けば、チキンライスが皿に盛られている。フライパンには卵……

「オムライスやん！」

『たまたま材料あったから作っちゃった』

肉じゃががいいなんて言うたけどオムライスもええやん……
あと作っちゃった、なんて軽い口ぶりで作れるもんやないぞオムライスは！

魔法にかかったように卵は熱を通しながらもトロトロに固まる。

『おりゃっ』

「おー！」

懐かしい。両親が忙しい時、Aの実家によく泊まった。おばちゃんは料理好きやったらしく、俺達姉弟にも色んなご飯を作ってくれた。その中にオムライスもあった。

何十年ぶりになるんやろう。同じ匂い、同じ盛り付けのオムライスをAが作っている。

「なあ、名前書いて！」

『これに？ええよ』

卵の上にはひらがなで”はるき”と書かれる。

『はい、出来上がり！』

「美味そう！！はよ食べたい！！」