Aimer Ⅱ (ページ12)

今日:2 hit、昨日:26 hit、合計:174,349 hit

＊ページ12

.

カウンターの上に置かれたオムライスからは湯気が立っている。

『オムライスは逃げへんから焦らんでええよ？』

はい、とAはスプーンを渡してくれる。

「いただきます」

『テーブル行けばええのに』

「いや、ここで食う」

ほんまにお腹空いてんねんもん。Aに会いたくて、思いたって前日にスーツケースに荷物を詰め込んだ。ファンフェスにもそれを持って行った。

”遥輝、お前そんなおっきい荷物持ってどこ行くつもりなん？”

”秘密っす”

”女か？”

”誰のとこ行ってもええでしょ！”

大将に絡まれもしたけどイベントを楽しみつつ、Aに会える期待感に胸を膨らませた。

終わったらすぐに新千歳に向かい、急いで搭乗券を発券して愛知にやって来た。忙しいもなんのその、Aの姿を見れたら疲れも吹っ飛んだ。

スプーンで1口掬って頬張る。

「……美味っ」

『それはどうも』

バターとケチャップの酸っぱさ、卵の素朴な甘みが口の中に広がった。昔を思い出す優しい味。人の手料理なんて久々に食ったから感動すら覚える。

『麦茶と緑茶とビール、どれ飲む？』

「ウーロンでお願いしたい」

『話聞いてる？』

こんなん胃袋掴まれへん方がおかしい。コップには冷たい緑茶が注がれる。

Aと付き合ったり結婚したりしたらこんな生活が待ってんのかな。今でさえ幸せやのに俺どうなってしまうんやろ……

『あっ』

Aは思い出したようにバッグからiPadを取り出す。冷蔵庫に背を付け、操作し始める。

「何してんの？」

『Twitter。私今日は何にもツイートしてへんかったから』

「俺もやりたい」

『自分のアカウント作ってよ。私ので遥輝がやったら大騒ぎなるから』

画面に目を向けるA。あれ、と独り言を言って不思議そうな顔をする。

『ねえ遥輝』

「ん？」

『遥輝さ、ファイターズの選手に私の話した？』

「いや、慎吾と雄也と卓さんにしかしてへんけど」

あと近ちゃん。

『あのね、松本剛さん、上沢直之さん、高梨裕稔さん、新垣勇人さん、平沼翔太さんっていうファイターズの選手っぽい人達からフォロー来てるから』

「はあ？」

『平沼さんはDMもくれてる』

そういって見せてもらった画面には平沼が送ったらしいメッセージが残されていた。

あいつAのファンやったんか！？