Aimer

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車内はBIGBANGの曲が流れ、後部座席では雄也くんと慎吾くんが無心でiPhoneをいじっていた。



「あっ、やっぱり」


沈黙を破ったのは雄也くんやった。



「南條Aちゃんってさ、」


『はい』


東海オンエアの子だよね？
耳にタコができるほど言われたことを聞かれるんだと思っていた。



「高校生の時にテレビ出てたよね？」


『へ？』


「いやあ、どっかで見たことあるなあって思ってたんだけどさ、
岡崎のパワフル女子高生として紹介されてた子じゃん！」


寮のテレビで見たんだよ、と見せたiPhoneの画面には……

『うわっ』


高2の夏、テレビに出演した時の動画のサムネイルが映る。

雄也くんの言う通り、岡崎のパワフル女子高生……ドラムを叩きながら歌う女子高生として東海ローカルの昼番組に出演させてもらったことがある。



当時私は吹奏楽と軽音の掛け持ちをしていた。もちろんバンドを組んでいたんだけど、たった1つだけ問題があった。
”メインボーカルがいない”
皆歌に自信がなかったり楽器に専念したかったりで歌う人がいなかった。そこでカラオケで1番点が高かった私が、3年間ドラム・メインボーカルとして歌っていた。

その動画が上がってるとは聞いていたけど、まさかこんな形で見ることになるとは思わなかった。



「えー！ Aちゃん高校生の時から可愛いやん！」


『どこが！？』


横髪を垂らした2つ結び。どこにでもいるような普通の女子高生のどこが可愛いの！？
再生された動画に慎吾くんが注目する。



「俺も見たい！」


「遥輝さんは事故ったらあかんから前見とってくださいよ！ あ、あと音下げて」


「くっそお……！」


……悔しそうな遥輝は置いておこう。



「うおお、Aちゃんすげえ……」


「でしょ？ こんなに可愛いのにパワフルだよね」


『褒めても何も出てこないよ！』


久しぶりに見たけどやっぱり恥ずかしい。そんでこれをリアルタイムで見ていた人と出会うのもまた、感慨深くも照れくさい。



「俺にも見せろって！」


『YouTubeに上がってるからあとで見て！』


でも遥輝に見られるのはもっと恥ずかしい。できれば私がいない所で見てほしい。

ようやく見終えれば、顔が熱く火照っていた。



「あ、遥輝さんの甲子園の時の動画や」


『あっ、これにしよ！』


「うん！」


「やめろ！」

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