ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ48)

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第46話ページ48

声に振り返れば、ニタリと不気味に笑う男がいた。
その赤い瞳と大きな手が眼前にある。
首に何か触れる感覚がした。
理解するよりも速く体は動いてくれた。

____風力７。

秒間、その場にしゃがみこんで手のひらを地面から真上に高く上げ、周囲の大気を持ち上げる。
私を囲む風壁ができて、崩壊男は舌打ちを鳴らして退がった。

『あっぶな……死ぬかと……』

１秒でも遅れてたら、窒息死プラス首と身体がお別れするところだった。
さっきの声、緑谷くんに命拾いしたようなものだ。

「……さっきのでHP切れたんじゃないのかよ」

『ザマァみろ』

正面に風を吹かせて相手を遠ざけるように風壁を作る。
近くには生徒がまだいる。危険を伝える必要がある。
なら、最善は一つ。
“個性”を併用するのは初めてだが、なんとか持ちこたえればいける。
もう一方は後で説明すればいい。

目線は敵から外さない。
頭で彼らに訴えかけるよう、イメージ。
両手が痺れようと、風を巻き上げる。
額に汗が滲むのを感じた。

〈___緑谷くんたち、聴こえる!?〉

どうかこの声が、彼らに届くように。

〈……コイツは本気でヤバい、相澤先生は怪我をして意識を失ってる！今のうちに避難して、誰か助けを呼んできてほしい！〉

頼む。今は言うとおり動いてくれ。
祈るような気持ちで強く念じた。

〈頭からAちゃんの、声？なんで……どうなってるんだ？〉

〈幻聴かしら、声がした気が……〉

「……なぁ、いま頭で工藤の声がしたんだけどよぉ」

そう上手くはいかない。
困惑して固まっている３人を見やり、思わず奥歯を噛みしめた。
気づくと私は3人に声をかけていた。

『早くッ!！』

あっ、と声に出しても遅かった。
意識が敵前から外れた瞬間、電源が落ちたように風は弱まっていき止んでしまう。

『やっ、ばっ……！』

一瞬の隙を狙われ、男は一瞬にして私との距離を詰める。
大きな手が服を掠めそうになるのを紙一重で避けていく。

「コントロールは繊細だけど意識が逸れた途端雑になってる。言葉にしてるのは風力階級表か？もうさっきみたいな風は出さないのか？なぁ___ガキ？」

『……っわ、』

伸ばされる魔の手から必死に避けていたが、この期に及んで運悪く尻餅をついてしまった。

やらかした。
やらかしたどころじゃない。
殺される、どうする、どうする。

男は冷めた眼光を目下の私に向けている。
顔面に貼り付けられた手のひらの隙間から覗く目を睨みつけた。