4.太宰の妻は信じられない ページ5
うふふ、と怪しい笑みを浮かべていると、扉をノックする音が部屋に響きました。
はっとして「どうぞ」と声をかけると、与謝野先生が驚愕した表情を浮かべたかと思うと安堵したように言います。
「よかったよ、目が覚めたんだね。どこか痛むところはないかい?」
与謝野先生とは面識があったため、やっと顔見知りが傍にいることにほっと息をつく。
「大丈夫です、与謝野先生。ところでここは……」
「あぁ、ここは探偵者の医務室だよ。それにしても、本当に心配したんだよ。事故にあったっていうのに無傷で運ばれてきたかと思えば、ずっと意識がもどらなくてねぇ」
「えっ! 私はどれほど意識がなかったのでしょう……」
というか、傷の治療はやっぱり与謝野先生じゃなかったてことか。謎が深まってきました。
「丁度一週間だよ。そうだ、太宰だが……」
太宰という言葉に私は思わず遮ります。
「大丈夫です! 別にあの人を呼ばずとも……。それにきっと、あの人は私のことなんて気にもしていないでしょうし」
「美知子……、落ち着きな。太宰は」
「聞きたくありません! あの人の名など!」
今まで抑え込まれた感情が爆発してしまい、語気を荒げてしまう。
「美知子……」
溢れだす涙を隠すようにうつむいていると、与謝野先生が私をそっと抱きしめます。
「今まで、よく我慢したね。がんばったよ。でもね、妾のはなしを聞くんだ」
そして与謝野先生は信じられないことを口にした。
私を見つけたのは、太宰さんであること。
そして、今の今までずっと私の傍についていて、やっと眠らせたところだったのだと。
「う、嘘よ。あの人が私のことを心配するなんて……」
「美知子がそう思うのも無理はないね。今までの太宰の様子じゃあ仕方ない。でもねぇ、血相を変えて運んできたのも、今にも死にそうな顔をしてあんたの看病をしていたのも事実なんだよ」
与謝野先生が話す言葉を、なかなか呑み込むことができない。
だってそうでしょう? あの人がどれだけ私を傷つけてきたことか。
「たとえそれが本当だとしても、私は……」
あの人を愛することなんて、できるのだろうか。
また、傷つけられるのではないか。
また、裏切られるのではないか。
また、また、また……。
もう、あの頃になんて戻れない。
前世の記憶を思い出した私は、以前の私とは別物なのだから。
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夜狐 - 文と文の間に行を開けた方が読み易いですよ!とても面白いです!応援しています! (2020年8月2日 16時) (レス) id: 5c5bcab0c3 (このIDを非表示/違反報告)
はるかかなた(プロフ) - みずほさん» こにらこそ、こんな、拙いお話を読んでくださり有り難いです!ありがとうございます!わたしも。頑張ります! (2019年12月21日 10時) (レス) id: b232e8656d (このIDを非表示/違反報告)
みずほ(プロフ) - 小説面白いので完結目指して頑張って下さい!楽しみにしてます! (2019年12月21日 10時) (レス) id: b19b648b69 (このIDを非表示/違反報告)
みずほ(プロフ) - コミック読み返してみたらちゃんと書いてありましたね!うちも確認不足でした(ー ー;)文ストの言葉は難しいところが多いね (2019年12月21日 10時) (レス) id: b19b648b69 (このIDを非表示/違反報告)
みずほ(プロフ) - ちなみに豆府は豆腐です (2019年12月18日 21時) (レス) id: b19b648b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるかかなた | 作成日時:2019年12月2日 1時