天才的なフーリッシュ ページ6
〜・〜・〜・〜
タクシーのなかで続く気まずい沈黙。それを最初に破ったのは素朴な疑問を抱いた私だった。
「どうしてタクシーなんだ？
警察なんだからパトカーで向かった方が良かっただろ、それに料金もかかるし───」
「パトカーは車椅子対応じゃない。
それに今日の僕は機嫌がいいんだ、普段は水の一滴だって他人にやらない僕がタクシー料を払うなんて前代未聞だよ」
「ずいぶんドライだな、君・・・」
というか、水一滴も他人に渡さない男がよくタクシー料を払ってくれるものだ、と私は密かに幸運すら感じていた。
そんな私を横目に、彼は窓の外から道行く人々を見つめていた。
さっきまであんなに輝いていたはずの水色の瞳は、街の霧すら映さない虚ろな目になり、すっかり据わっていた。
「・・・君、職場や家族のあいだじゃなんて呼ばれてるんだ？」
「みんな僕のことを"フーリッシュ"と呼ぶ。"フール"と同じ"愚か者"って意味」
「帰ったら君抜きの会議をしようか」
「いいさ、怒ってやる必要は無い。凡人の目に、僕は風変わりに映るから仕方ないんだ」
「それは君が天才だから」
「・・・他人からその言葉を聞いたのは初めてだ」
「トーマス・エジソンが凡人だったら今頃伝記になんか載ってない。一般人じゃないだろ？ある意味天才は"変わってる"のさ」
彼はニィと笑みを浮かべて前を見据えた。
目的地の殺人現場が見えて微笑んだのか、私の言葉に微笑んだのか、私には見当もつかない。
「さあ、着いたよ。オックスフォード・ストリート102で間違いないかい？」
「ああ、ありがとう。お釣りは結構」
彼はタクシーから飛び降りた。私は運転手に下ろしてもらい、彼のあとを追う。
「フーリッシュか・・・なかなかい響きのあだ名だな。私もそう呼んでも？」
「好きにするといい」
彼はあっさり了承してくれた。目線はずっと102号室に掴まれたように離れない。
しばらくして102号室から目が離れ、とたんに俊敏になったフーリッシュに押され、猛スピードで殺人現場に転がり込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです！ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (
レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい！ (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました！拝見させていただきますね！ (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロユリ☆★ | 作成日時：2018年7月25日 13時
