The city of fog〜霧の街〜

真夜中の事件 ページ1

私はリル・トバイアス。ごくごく普通の・・・いいや、普通とは言えないかもしれないな。


"なぜだ？"


みんなはそう言うだろう。


私の体は全身麻痺している。


だが、この表現はいささか大袈裟かもしれない。10年前から続けているリハビリのおかげで今はだいぶ回復している。


自分でマグカップを持てるくらいにはね。その証拠に、いまこうしてこの物語が書けている。


手先は動かせても、腕は少ししか動かせず新聞を持つことができないので、私生活ではスマホでニュースをチェックしている。


そんなある日のこと。


職場であるヤードに車椅子で向かっていたその途中の道で、とても目を閉じたくなるような恐ろしい事件が私の目の前から始まった。



ドスッ！



鈍い音が走った。
その痛々しい音の正体に、心と体がズシッと重くなるのを感じた。


女性の死体が頭から血を流して私の3メートル先に転がっていたのだ。


いまは深夜の2時だ。


人がいなかったため大騒ぎにはならなかったが、私はあせって自分の職場に通報を入れた。

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