春色列車。２

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白衣着て、
救急車を待つ。


運ばれてきた患者は、
救急隊員の話によると、

酔っ払いに絡まれて殴られた、
40代半ばのサラリーマンらしき人。


ストレッチャーに寄り添って走りながら、
診たところ、
頭蓋骨骨折、
脳挫傷起こしてる可能性が高い。


手術室の扉が開く直前、

娘さんと思われる、
制服姿の女の子が、
廊下を駆けて来た。


「先生、父は・・・」


「今から緊急オペになります。
最善を尽くします」


助けられる命と、
そうでない命。

医者に出来る事なんて、限りがある。


人の命の儚さと、

相反する、力強さを、

幾度も幾度も、
目の当たりにしてきた。


どうでもいい命なんて、
一つもない。


分かってることは、そんな当たり前のことだけ。






無事に手術が終わった頃には、
深夜１時回ってた。


「先生、父を助けて下さって、
ありがとうございました」


まだ高校生の娘さんが、
深々と頭を下げる。


「いえ。
危機は脱しましたが、
まだ予断は許さない状況です」


後遺症が心配や。

あの子のためにも、
何事もないとええけど・・・


看護師が、
彼女の肩を抱いて、
入院手続きに連れて行った。


こない長い時間、
ほったらかしてもうて。

Aちゃん、どうしてるかな。


あの患者さんが運ばれてきた、
壮絶な場面、見てへんとええけど・・・



エレベーターに向かって、
廊下を歩いてたら、
小児科に入院してる、
４、５歳位の男の子が、
ぐすんて、泣いてんのが、見えた。

起きてしもたんかな。

小児科は東棟やのに、
迷子になってもうたんやな。


声かけようとした時、


「どうしたの？
お部屋、分かんなくなったの？」


Aちゃんが、廊下の角から不意に現れた。


「僕、鹿野たすくです。
お姉ちゃんは？
看護婦さん？」


「えっと、うん、そう。
看護婦の、AAです」


しどろもどろになりながら、嘘ついてる。

可愛ええなあ。


「なんで看護婦さんの白い服着てないん？」


「今日は忘れちゃったの。
でも看護婦さんだから大丈夫だよ」


「ふうん。
ちっとも眠られへんから、
お化け、ほんまにおるんかなあって、
探検してたら、
ピーポーが来て、
血まみれのゾンビが、
ベッドに乗せられて、
先生たちと手術のお部屋に入ってってん。
たすく、見てん」


うわあ。

なんちゅう表現・・・

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