第四章 ページ36
朝の散歩を終えて部屋に戻った後、俺はすぐに電話を掛けた。
君の主治医の声を聴くのは久しぶりで、少し懐かしくもあった。旅の邪魔をしちゃいけないと、俺との連絡は文字でのやり取りだけだったから。
「…分かりました。
病院を介すと、移動が体の負担になるから…そのまま北斗くんのご実家に向かってください」
最期は、自宅で。それは北斗が出発前に決めたことだった。
フロントで手配してもらったタクシーは、昼下がりにホテルの前に停車した。
荷物を纏めて外に出ると、車の傍で田中さんが待っていてくれた。
「ほんとうに、素敵な時間でした」
「…僕もお二人にそんな時間を提供出来て、嬉しく思います」
そう会話を交わしたら、車いすに乗った君が唇を動かした。
田中さんは屈んで、北斗の声にじっと耳を傾ける。
「さようなら」
君の言葉に、田中さんは少し俯いてから、潤んだ瞳を細めて言った。
「はい、さよなら。…また。」
二時間ほど揺られた後、車は住宅街で止まった。
玄関先で待っていた君のご両親とお兄さんは、
笑顔で、俺達を出迎えてくれた。
涙が出るのを我慢しているのは、きっと皆同じだった。
「おかえり北斗」
「…おかえり。」
「たくさん楽しんできたか？」
帽子をかぶった北斗の頭を、お父さんは何度も撫でる。
「ぅん、」
「そうか。…よかった、…よかったね北斗」
お母さんは、俺の事を抱きしめてもくれた。
君はこんなにもあたたかな家族の元育った。
…そりゃあ、北斗も温かい人なわけだ。
家族と再会した君は、ずっとずっと嬉しそうに微笑んでいた。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
