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翌朝早くに目が覚めると、君は既に瞼を開いていた。
天井をじっと見つめる北斗は、なんとなく少し笑っているように見えた。
誰かとお喋りしているのかもしれない。
俺は不思議と、そう納得していた。
「…ほくと」
その声に反応してこっちを向いた君は、
もう殆ど出なくなった声で、「海に行きたい」と言った。
「じゃあおんぶしてあげる」
「ふふ…」
俺は起き上がって、低く屈んで北斗に背を向ける。
ゆっくりと抱きついてくれた君を背負うと、想像の何倍も軽くて。大事に大事に抱えて、部屋を出た。
夏の朝は、まだ涼しかった。
ちょうど朝凪なのか、風も止んで、浜辺は本当に静かだった。
ザクザク、という地面を踏む足音。
規則的で且つ、不規則な涛声。
そんな自然的な音だけが、聴覚を心地よく刺激した。
「きもちいね」
俺がそう言うと、君は返事をする代わりに
回した腕に僅かな力を込めた。
背中に感じる愛おしさに、心が熱を帯びる。
俺が言ってあげなきゃ。
俺が、君を守ってあげなきゃ。___
「北斗」そう呼んだら、
君は小さな声で「なあに」と返事をしてくれた。
「…北斗と毎日一緒にいてさ、毎日同じ景色を見て、
美味しいもの食べて、たくさんお喋りして
いっぱい…泣いちゃったけど、でもいっぱい笑えたから
俺、ここに来てよかった、って。
北斗と同じ時間を過ごせたから
人生で、一番の思い出が出来た」
そう言ったら君は、俺の耳元でくすっと笑った。
「おれも、だよ」
それから俺の首筋に、頬を優しく擦り寄せてくれた。
俺はやっぱり泣いちゃいそうで、誤魔化すみたいに視線を海へと投げた。
朝日を反射させた水面の輝きは、まるで小瓶に閉じ込めた金平糖みたいだ。
「…帰ろう、北斗」
海風が、優しく吹き抜けた。
その風に乗って、言葉が空高く消えてしまう前に
君は静かに、ゆっくりと頷いた。
北斗が願ったこと、
俺はちゃんと叶えてあげられただろうか。
俺は君にとって、
ちゃんと最愛の人でいられただろうか。
そんな俺の気持ちを、
君はあっという間に癒してくれた。
「ありがとう、大我」
たったその一言で。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
