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それから俺は、本屋さんへ出向いた。
ガイドブックのコーナーで、関東方面を中心に何冊か選ぶ。パラパラ、とページをめくると青々とした木々や 美しい花々、穏やかな海の風景なんかが掲載されていた。
「もう、全部行きたいっ。
あれもこれも、って思っちゃうな」
買ってきたガイドブックを 君はそう言って嬉しそうに眺める。
「大我見て、この鉄道 菜の花が有名なんだって」
「へぇ、とっても綺麗だね。
……わ、しかも、ちょうど今が見頃だよ」
「ほんとじゃんっ！コホッ、ｺﾎｯ」
北斗が突然咳き込むから、慌てて背中を撫でる。
こほっこほっ、と少し苦しそうにしたあと「だいじょーぶ」と小さな声で教えてくれた。
「もう…気をつけなきゃだよ」
「そうだね、俺 癌だったね」
へへ、と君が笑う。
砂時計の砂が落ちてゆくのを、俺に止めることが出来たらいいのに。不可能を考えてしまって、泣きそうになった俺は、君をそっと抱きしめる。
「大我？」
「…始まりがあるってことは、終わりがあるってことなんだよね」
涙が込み上げてくるのを必死にこらえる。北斗だって分かっているはずのことを、口にしてしまった。
ごめん、と謝ると 君は俺の頭を撫でてくれた。いつも、俺が君にしているように。
「ありがとう、大我。
大我だって、辛いのにね。ずっと俺の前では、笑顔でいてくれる」
「俺の笑った顔が 見たいんでしょ」
「そうだよ。だから、ありがとう」
病室に、淡いオレンジ色の光が射し込む。
照らされた君の横顔は ほんとうに綺麗だった。
＊
「出発の日はもう決めた？」
「うん、明後日。快晴だって天気予報が言ってるの」
高地先生は、沢山の薬や資料を抱えて 再び病室にやってきた。
さっきまでお昼寝をしていた君の表情は、ぽやぽやとしていて可愛らしかった。
「じゃあ北斗くん、先生との約束ね。
ひとつめ。必ず薬を飲むこと。
今はこの鎮痛剤を飲んでもらってるから、痛みが少ない間は朝昼晩、必ず服用してね。
それから…痛みが和らがなくなったら、こっちの薬。」
机の上に、何錠もの薬が並べられた。恐らく、2ヶ月分くらいはあると思う。
「眠気や吐き気の副作用があるから、そのお薬も出しておくね。」
「うん、ありがとうございます」
それから高地先生は、「これは大我さんとの約束でもありますが」と言って。
「ふたつめ。絶対に無理はしないこと。
今は落ち着いているけれど、本当に何が起きてもおかしくない体なんだよ。」
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
