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君を乗せた車いすを押しながら、ホテルを出て、少し歩く。
山に囲まれた辺りは人通りも車通りもなくて、とても静かだった。
名前も知らない虫の声が、暗くなってきた空を昇っていった。
「…花火なんて、子供のとき以来かも」
北斗はそう言って、嬉しそうに花火の封を開けた。
2台ほど車の止まった駐車場の端の方を選んで、フロントで借りたバケツとライターの準備をする。
「ふふ」
「付けるよ」
「うんっ」
ぽっ、と灯った火が風に揺らめいて
君は懸命に、持っていた花火の先をそれにあてがう。
ﾌﾟｼｭｰｰｰｰｯ
吹き出す黄色い炎と飛び散る火の粉に、君の小さな叫び声が響いた。
「ひゃっ、たいがっ」
「ふふふ北斗ビビり？笑 だぁいじょうぶだって」
そこだけが明るくなって、北斗の笑った顔がはっきりと見えた。
まるで飛び散っている火の粉みたいに、わんぱくに笑っている。
きっとその無邪気さは、子供の頃から変わらないんだろう。
「きれいっ、綺麗だね大我ぁ」
「うん、すごく綺麗だね。俺もやっちゃお」
交互に火をつけ合ったり、同時に着火したり。
赤や黄色、黄緑色に吹き出す火花は、
確かにこの夏を、鮮明に彩っていた。
「大我」
「ん？」
「楽しい。俺今、すっごくたのしい」
真っ直ぐと俺を見つめる君の目は、ほんの少しだけ潤んでいた。
ぎゅっと手を繋いだら、北斗は優しく笑ってくれた。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
