3月22日22:30 ページ25
「安心しろ銀時、先生がお前の名前を出さぬ日はない」
「そうだなァ、毎回子ども達に悪童として名を出されちゃ反面教師にしろと言われてらァ」
「はーー!?んだよ、それ」
様々な地を渡り歩き、そして最後にここかぶき町に根を下ろした「松下村塾」は今でも誇り高き志を掲げて名を馳せている。
桂と高杉はそんな村塾を一人で切り盛りしていた松陽の元に残り、自分たちの弟弟子たちを育てていくのに協力していた。
銀時だけはのらりくらりと生きてきた中で困っている人達を助けてやりたいと思い、一人独立した後に「万事屋」という何でも屋を営むことで落ち着いた。
「ったく、松陽のヤロ……俺ァずぅ〜〜っと真面目で、人畜無害で、そんで……まぁ色々やったかもだけど、いい弟子だっただろ〜が…」
「ンなわけあるか。手前ぇのその性格にゃ朧だって手ぇ焼いてたろ」
「兄弟子は独立してから会ってはいないが、今でも貴様を心配した手紙が届くぞ」
そう言って桂が銀時の頭を小突くと、銀時は「あっそ」と言って机に突っ伏した。
いつの日だったか、今よりも遠い昔だ。
朧げな記憶と、霧がかかってしまったように曖昧な風景の奥底で、何故かはっきりと覚えていることがある。
高杉と桂と兄弟子の朧、そして松陽がいて。
とても些細なことで笑って、馬鹿みたいに些細なことで喧嘩をしたこともあった。
何もかもが違う自分達が、それぞれ思うがままに剣を学んで、自分達がしたいようにしてきたことを叱りつけることもなく松陽は笑っていた。
「いや、叱ることはあったか……ゲンコツ、めちゃくちゃ痛ぇんだよな」
ははっと漏れた乾いた笑いに高杉が同調するように目を細めた。
それでも、こんなに些細な思い出があまりにも大切で、それを失いたくなかったばかりに大人になってもこうして馬鹿みたいに笑い合っているのだ。
本当はもっとちゃんとしなければいけないのかもしれないが、今はまだもう少しだけ仲間と馬鹿みたいに過ごしたい。
もう少しだけ、そうやって先延ばしにしながら生きてきた。
「久々に朧にも会いてぇな…」
「言えば帰ってくるだろ」
「そっか……んなに遠い場所じゃねぇんだっけ…」
いよいよ瞼が重たくなってきて、銀時は机に伏したまま目を閉じた。
そうだ、急がなくても望めばその日はその内に必ずやってくる。
朧だって、松陽だって、高杉や桂と同じようにいつでも会える。
(だけど、)
どうしてか、朧が今どこにいるのか思い出せなかったのだ。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時