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Memory/kryn ページ10

「きりやん!」


小学校内でもそれなりに有名な、男子に混ざって遊ぶタイプの活発な女子だった。

底抜けに明るく、口が達者で、弱い者いじめを許さない。真っ直ぐな目をした子。

俺が笑えば、Aも笑った。ケラケラ笑いながら、夕方5時のチャイムが鳴るまで泥まみれになって遊んでいたのが懐かしい。


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「きりやん」


中学校に進学して、流石に男友達と公園を駆け回ることは無くなったが、俺を呼ぶ声色はそのまんまだった。

どこの集団に属しても、その中心で笑っていたのを覚えている。

相変わらず口は達者で、毎日のように下らない言い合いを繰り返した。

偶に喧嘩をしても、次の日にはケロッとした顔で「おはよう」、なんて言うもんだから、コイツの頭は鶏に近しい何かなんじゃないかと本気で考えた事もある。


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「……きりやん、」


涙声で名前を呼ばれたのは、これが初めてだった。

高校の夏休み直前の放課後。小学生の時一緒に遊んだ公園のブランコに、目を真っ赤に腫らしたAが1人で座っていた。

夕日がやたら赤かったこととか、蝉の合唱が煩かったこと、汗でワイシャツが肌にへばりついて不快だったことまで、今でも鮮明に思い出せる。

目の前で啜り泣くAは酷く頼りなくて、まるで知らない女の子みたいだった。

あ、"男"が絡むと、コイツはこんな顔をするのか、と。

"幼なじみ"で"友人"の俺は、確かにそう思った事を覚えている。

困惑、憤怒、憐憫、嫉妬。

色んな感情が綯い交ぜになって、「大丈夫か?」も、「そのクソ野郎ぶっ飛ばして来てやる」も、「俺にしとけば良いのに」も。

どの言葉も魚の小骨みたいに喉につっかえて、何一つ形にならなくて。

ただ黙って、いつか駅前でもらった広告入りのポケットティッシュを差し出すのが、その時の俺に出来る精一杯だった。

歪/nkm→←▼



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作品ジャンル:恋愛
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あいりす(プロフ) - 無理してほしくはないので! (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - あ、無視してもらっても良いですよww (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - リクです!Smさんに!「ご飯にする?お風呂にする?それとも私?」をお願いします!シチュエーションは何でも良いです! (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
半熟卵(プロフ) - すいみん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!少しでもすいみん。様に楽しんで頂けたのならば幸いです☺︎ (2021年9月28日 19時) (レス) id: f0de40f6dd (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - すごい、すごすぎます。””本物””の小説を見ているようです。視点主の気持ちをうまく文に乗せていて、感情が読み手側に考えさせられる?というか、なんとういか…。=素敵です。次の更新も待ってます、無理せず頑張ってください! (2021年9月27日 21時) (レス) id: 89ac922806 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:半熟卵 | 作成日時:2021年2月4日 21時

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