Fall-in love／kntk ページ26
剥き出しの肌を容赦無く焼く日差しと、それを煽る蝉の声。
また首筋を伝った汗を拭いながら、蝉の声に混じった声の方へと足を進めた。
｢……ここで、合ってるよね?｣
まるで縁が無い土地に不安を覚えるも、遠くに見覚えのあるジャージ姿をちらほら見つけて胸を撫で下ろす。良かった。合ってたみたい。
初めて大会に出るのだと、友人が嬉しそうに話してくれたのは2週間前。
もし予定が空いていたら応援に来て欲しい。
興奮と緊張が入り交じったそのお願いを、断る理由なんて何処にも無かった。
パッと見たところ、コート上に友人の姿は無い。時間が押しているのだろうか。午前中の男子の部がまだ行われている様だ。
｢……あっ｣
隅に件の友人を見つけて、思わず声を掛け、そうになって止めたのは、彼女の顔が、恐ろしいくらい真剣だったからだった。
覇気のある掛け声と、飛ぶ激励。
ふとした瞬間、蝉の声しか聞こえなくなるくらい、ぴんと張り詰める空気。
金網のフェンス1枚挟んだ向こう岸は、勝負の世界。
アスリートのみが存在を許される空間に、知らず知らずのうちに息を潜めていた。
｢っしゃあ!!｣
途端、上がった声に釣られてそちらへ目を向ける。
コート上で、自校のユニフォーム姿の男子が大きくガッツポーズを決めていた。
デュース。逆転。セットポイント。
うろ覚えの知識と周りの観客の呟きを頼りに、彼がたった今戦況を覆した事は理解出来た。
自校の選手が頑張っているなら、応援しなきゃ!
その一心で、試合が行われているコートへと走り寄った。
日焼けした肌に、真っ白な歯が良く映える。
汗を拭う為捲ったシャツの下に、締まった体躯がチラリと覗いた。
かっこいいなぁ、あの人。
普段見かけた事が無いから、先輩だろうか。
快活な笑顔に思わずこちらも笑みが零れる。
刹那、彼の纏う空気がガラッと変わって、心臓が跳ねた。
ラストセット。これを取ったら勝ち。
無邪気な笑顔は鳴りを潜め、真っ直ぐに敵を見据える。
闘う人の、瞳だ。
｢……がんばれっ、｣
息が出来ないくらいの緊張と高揚で、境界線のフェンスを強く握った。
彼がラケットを振るう。打ったボールが跳ねる。足がコートを蹴る。
冴え渡った一挙一動を見逃したくなくて、瞬きすら惜しい。
結局、私がまともに呼吸が出来るようになったのは、彼の最後のボールが相手のコートへ鋭く叩き込まれた後、暫く経ってからだった。
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あいりす(プロフ) - 無理してほしくはないので！ (2023年1月28日 14時) (
レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - あ、無視してもらっても良いですよww (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - リクです！Smさんに！「ご飯にする?お風呂にする?それとも私?」をお願いします！シチュエーションは何でも良いです！ (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
半熟卵(プロフ) - すいみん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます！少しでもすいみん。様に楽しんで頂けたのならば幸いです☺︎ (2021年9月28日 19時) (レス) id: f0de40f6dd (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - すごい、すごすぎます。””本物””の小説を見ているようです。視点主の気持ちをうまく文に乗せていて、感情が読み手側に考えさせられる？というか、なんとういか…。＝素敵です。次の更新も待ってます、無理せず頑張ってください！ (2021年9月27日 21時) (レス) id: 89ac922806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：半熟卵 | 作成日時：2021年2月4日 21時
