My dear／sm ページ15
『ごめん!今日は遅くなるから、炊飯器のご飯と一緒に冷蔵庫のおかず食べてて!』
申し訳なさそうな顔文字と、同じくごめんね、と書かれたスタンプ。
了解、の意を込めたスタンプを送ってから、30分前から空腹を訴えている胃を収めるべく立ち上がる。
珍しい。Aが残業なんて。
俺がいつもここに来る時間にいないばかりか、ここまで帰りが遅くなるのは初めてだ。珍しすぎて、貰ったは良いものの殆ど使ったことの無い合鍵を探す為、玄関前でたっぷり5分は手間取った。
冷蔵庫に入っていたタッパーの中身は、煮物のようだ。それを小皿にあけ、電子レンジに放り込む。
彼女の家に来る時は大抵作り立ての料理を振舞って貰っていたので、何だか妙な感じだ。
まぁ、今俺の胃袋に入ろうとしている煮物も彼女の手作りである事に変わりは無いし、毎度飯を振舞ってくれる彼女には感謝している。
寧ろ、今日みたいな日が殆ど無いことの方が珍しいんだ。きっと彼女の優秀ぶりが職場でも遺憾無く発揮されているからに違いない。
｢……いただきます｣
カチャ、コト、
彼女の家で、彼女のご飯を1人で食べる。会話はあるはずも無く、箸と食器が無機質な音を立てるだけ。
飯は何時も通り美味しいけれど、彼女の家がしん、としているのは落ち着かない。
自分の家だとこんな事思いもしないのに、不思議だな。人ってやつは。
｢……風呂、どうすっかな｣
1人分の食器を片付けながら、何度も時計に視線をやる。最後の食器を拭き終わった時、玄関の方から足音が聞こえて、思わずそちらへ体を乗り出した。
｢おかえり｣
扉が開いたのとほぼ同時に、いつも言われる側だった言葉を投げる。暗い玄関で、スーツ姿のAが少し目を見開いた後、笑った。
｢ただいま〜。ごめん、遅くなって｣
｢いや、いいよ。飯食わせてもらったし｣
｢あ、食べた?ごめんね、作り置きで｣
｢いや、美味かった｣
スーツを脱いで、ハンガーに掛ける。普段あまり見ないその仕草を、物珍しさから背後で眺めていると、彼女は手を動かしながら口を開く。
｢あー、私、まだ仕事残ってるから。スマイル先お風呂入っててくれる?｣
｢……え、飯食わないの?｣
｢うーん、いいや、後で｣
｢……もう結構、遅いけど｣
｢うん、急ぎの仕事なんだよね〜｣
……珍しい。
彼女と、視線が合わない。
壁に向かって話し続けているから、顔が見えない。彼女の声色はいつもと同じ筈なのに、俺の声が届いていない、様な。
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あいりす(プロフ) - 無理してほしくはないので！ (2023年1月28日 14時) (
レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - あ、無視してもらっても良いですよww (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
あいりす(プロフ) - リクです！Smさんに！「ご飯にする?お風呂にする?それとも私?」をお願いします！シチュエーションは何でも良いです！ (2023年1月28日 14時) (レス) id: 255513ac99 (このIDを非表示/違反報告)
半熟卵(プロフ) - すいみん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます！少しでもすいみん。様に楽しんで頂けたのならば幸いです☺︎ (2021年9月28日 19時) (レス) id: f0de40f6dd (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - すごい、すごすぎます。””本物””の小説を見ているようです。視点主の気持ちをうまく文に乗せていて、感情が読み手側に考えさせられる？というか、なんとういか…。＝素敵です。次の更新も待ってます、無理せず頑張ってください！ (2021年9月27日 21時) (レス) id: 89ac922806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：半熟卵 | 作成日時：2021年2月4日 21時
