出久の双子の姉は愛されたい2 (ページ16)

今日:3 hit、昨日:39 hit、合計:696,054 hit

愛されたい60 ページ16

とりあえず落ち着いて話すために、そう震える声で説得を試みる。

お母さんは考えているのかすぐに答えない。

引「……今すぐそっちに行くわ。だから出久を渡しなさい。」

そのまま頷いてくれれば良かった。

なのに、お母さんはそう冷たく言い放った。

なんで？出久のこと大切なんだよね？どうして？出久が危ないかもしれないんだよ？

それとも何、私のところにいる方が出久が危険な目に合うと思ってるの？

いつの間にか目に溜まった涙はまだ頬を伝っていないから大丈夫だ。

まだ頑張れる。

『ねぇ、お母さん。出久のこと考えて…もし無意識で個性を発動させてしまったら？出久の状態酷かったんだよ？四肢の骨が粉砕して、曲がっちゃいけない方向に曲がって倒れてた。』

出久を見た時のことを思い出せば、血の気が引いていく感覚がする。

また同じことになるなんて、そんなの耐えられる？出久が耐えれても、見てる私が耐えられるかわからない。

けれどお母さんに私の想いは届かずまた繰り返す。

返して、と。

『出久は痛みで泣いて、気を失ってた！！』

溜まっていた涙が零れる。

ダムが決壊したみたいに。次々と。

引「…返して」

『もし！！寝ている時無意識で個性を使ったら？怪我でわかるように制御出来ていないの！！また同じ怪我をするんだよ？』

ねぇ、いいの？と涙声で聞く。

引「……」

『…お母さん。出久がまた痛みで泣いて気絶するんだよ？お母さんは治癒系じゃないから…出久は一時そのままなんだよ？いいの？』

出久が大切なんじゃないの？と消えそうな声で聞く。

お母さんは何も答えず電話を切った。

その日、母が私の家のチャイムを鳴らすことは無かった。