90、霧がかっている記憶 ページ43
「Aちゃん、さっきはごめんね?」
「…」
スタスタと前を歩くAに先程から謝り続けている太宰だが、完全に無視を決め込まれている。
「…川に飛び込んだ所為でずぶ濡れですよ…。
さっきから誰かとすれ違う度に物凄いスピードで避けられるの気づいてます?」
「え、怒ってるのそっち?」
「過去は振り返らない主義ですから。探偵社に帰ったらお兄ちゃんに言いますけど」
「それだけは駄目!私今度こそ殺されちゃう!」
慌てる太宰を無視して歩く。
さっき駄菓子屋で買った四袋分のお菓子がガサリと音を立てる。
ビニール袋の重さに疲れて持ち直そうとしたとき、突然、手に掛かっていた重さが無くなった。
「私が持とう」
「…ありがとうございます」
太宰が軽々と持って再び歩き出す。
暫くの沈黙の後、彼が口を開いた。
「……Aちゃんって、本当の両親の顔は覚えているの?」
その質問にAは一瞬戸惑うが、静かに答えた。
「…両親が居たのは確かなんですけど、顔や声は全く思い出せないんです。記憶がしっかりあるのも国木田家に拾ってもらってからで」
「そっか…」
「どうしてそんなこと聞くんです?」
「うん…ちょっと気になってね」
太宰はAをジッと見る。
本人は気づいていないようで、前を向いて歩いている。
「…初めて会った時から思っていたのだけれど」
「何ですか?」
「私、Aちゃんの顔に見覚えがあるのだよ」
「私の、顔に?」
少女は驚いて太宰を見る。
「どこかで見たことがある、そんな気がしてね」
どこで会ったのか、どこで見たのか、どこで知ったのか。
そもそも気のせいか、人違いなのかは分からないが。
『不思議だなぁ』
知りたくても、記憶に霧がかかっているかのようにハッキリしないままだった。
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ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時