88、方向音痴も悪くない ページ41
「ええと…この道を真っ直ぐ行って右に曲がる。そしたら…?あれ?」
乱歩に貰った地図をジッと見つめながらヨタヨタと道を歩く。
地図をくれたのは良いものの、一つ重要な問題があった。
「……地図って、どうやって見るんだろ」
そう、地図の見方が分からないという、そもそもの問題である。
あはは、と無意識に出た笑いは無慈悲にも風に流された。
「とりあえず…進んでみる?」
一人で地図とにらめっこしながら進む。
右に曲がり、左に曲がり、信号を渡るなどすること約十五分。
着いた場所は、
「うん………
なんで川?」
目の前には、さらさらと優雅に流れる川があった。
地図の道順どおりに進んだはずなのに、何故か河川敷だった。
「……」
ここまでくるともう、天性の方向音痴としか言いようがない。
どっと疲れが襲ってきたので、その場に座ってぼけーっと川を眺める。
『そういえば…横浜に来た初日も迷子になって、ここで野宿したっけ』
兄に会いたくて横浜に来てから既に約一ヶ月が経った。
目が覚めたら太宰の部屋で寝ていたり、可愛らしい少女にめちゃくちゃ高級な飲食店に案内されたり、直哉に乗っ取られたり、国木田から信じられない事実を伝えられたり…。
今までの出来事を思い出しながら時間の流れは早いなぁ、なんて思っていると、目の前の川に何かが横切った。
「…え」
思わず目を擦った。
今のは見間違いか?
一瞬、"人の足"が流れているように見えたが。
もう一度目を凝らす。
「……私の目は正常だった」
ちゃんと人の足だ。
「と、兎に角助けないと…!」
立ち上がったとき、ふと何かが引っかかった。
「ん?
川…人の足……入水……自 殺?といえば」
そう、こんな奇行をする人はそうそう居ない。
となると、
「太宰さん…なのか…?」
ああ、気づいてしまった。
Aはニヤリと口角をあげる。
本当は先に駄菓子屋に行く予定だったが、もう一つのミッションを先に達成出来そうだ。
「方向音痴も案外悪くないかも!」
そう小さく呟いて、川に飛び込む。
ちなみに、水温が冷たすぎて心臓が止まりかけた。
179人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時